30日はナノゼリーこと瀬戸弘幸氏が主催する「在日外国人犯罪者追放デモ in 新大久保デモ」へのカウンター行動で新宿へ向かう。
この一週間は大きな動きがあった。レイシスト、カウンター双方から複数の逮捕者を出した16日の新大久保・排外デモを受けて100人以上の弁護士がヘイトデモを告発、山岸憲司・日弁連会長も声明を発表した。
人種的憎悪を煽り立てる言動に反対する会長声明(日本弁護士連合会)
これに対して、今回ヘイトデモを強行するレイシスト側もさまざまな「対策」を打ってきた。
中でも大きかったのはスタートは大久保公園、ゴールは柏木公園という設定自体は変わらないのだが、これまでのように職安通りから明治通りを左折して大久保通りに浸入するという、彼らが思い存分ヘイトを撒き散らすコースは取られず、右折して靖国通りを直進するコースが設定された(当初デモは新宿区役所に抗議するデモのはずだったが、区役所通りはおろか、靖国通りから区役所に顔を向けたレイシストすらもいなかったのではないか。相変わらず趣旨がいい加減過ぎるのだ)。
「in 新大久保デモ」と銘打ちながら、今回彼らは「新大久保」を歩けないというわけだ。
公安委員会から名目上の許可を得て、デモの名を借りた新大久保の「お散歩(=ストレス解消の嫌がらせ、ヘイトクライム)」はひとまずこれで完全に阻止された。これはレイシストをしばき隊、プラカード隊、ダンマク(横断幕、ゲートフラッグ)隊を始めとした無数のカウンター諸氏の行動力、新大久保駅前でのヘイトデモ反対署名やネットを通して新宿区に公園の使用不許可を求める署名活動を地道に続けてきた皆さんの成果といえるものだろう。
逆に彼らのデモが本来の「デモンストレーション」の意味を果たしたいのならば、そして不特定多数の日本人に訴えたい主張があるのならば、大久保通りよりも新宿のメインストリートのひとつである靖国通りでデモができることを喜ぶべきだろう。そこで、どれほど「普通の人たち」の好奇の目に晒されても、である。
しかし、まだ彼らはヘイトデモ自体を止めたわけではない。
正午過ぎに一旦大久保公園に行ってみると、すでに公園に通じる道路各所に鉄柵が設置され始め、13時頃から徐々に周辺のカウンターが警備によって排除され始める。
ヘイトデモ参加者のレイシストたちはスタート地点である大久保公園に三々五々集まるのではなく、新宿駅東口交番前に一旦集合してから全員で大久保公園まで「集団登校」するという。警備の動きを見ながら、オレは歌舞伎町一番街から西武新宿駅周辺で待機する。
前日29日には「丁寧な言葉使いでヘイトを撒き散らす」という、実に頭の悪い試験的なデモが少人数の参加者で、新大久保で強行されていた。
ヘイトスピーチの問題は「丁寧な言葉使い」などとはまったく関係ないのだが、いまだにカウンター批判の根拠を「許可を得ているデモに対して無許可のデモ(カウンター)は法律違反」という、まったく頓珍漢な批判を繰り返すネトウヨらしい発想である。あくまでも個人参加のカウンター行動は所謂許可が必要な「デモ」ではないし、車道を使用しているならともかく、歩道で行動している以上は、まったく問題もない(現時点では)。
このデモではレイシストの集合場所の情報が錯綜した。デモ出発前に何とか集合場所に追いついたものの、主催者を取り囲んでのしばき開始と共に、今度はカウンターが、あっという間に集まってきた30、40人ほどの警備に取り込まれ、デモ終了まで公園内に「軟禁」、大久保通りにデモを通過させるという事態になった(その場を逃れていたカウンターは追走した模様)ため、この日の行動はとにかく先回りが意識された。
15時前後、彼らは事前に、ナノゼリーこと瀬戸氏のブログでアナウンスされていた「50人」ごとではなく、全員まとまって集団登校してきた。
16日に逮捕された人間を含む、関東で顔と名前を売っている連中が名古屋に向かっていたためか、また動員されたためか、今回は予想以上に高齢者が多い(わずか2週間前に、主催デモで逮捕者を出すという醜態を晒した桜田がいたのには驚いた)。
まずは「お出迎え」の怒声と罵声を喰らわせつつ、路地を先回りし「登校中」のレイシストを追う。また公安と機動隊も道路の入口ごとに展開し、カウンターの行動を規制し続ける。
大久保公園の入口となる道路では、しばき隊を中心にしたカウンターが大挙して押し寄せ道路を封鎖していた。今回のカウンターでは近隣の大久保病院を考慮して公園周辺でのトラメガの使用を自粛するよう、しばき隊公式からアナウンスされていたため、生声での「帰れ」の怒声が地鳴りのように巻き起こる。
レイシストたちが公園に入るとオレは職安通りに向かい、レイシストの通過に待機する。
一方でデモのスタートを待つ大久保公園では、カウンター行動がこの日のひとつのピークを迎える。
「カウンターはあくまでも個人参加」と書いてはいるが、この日のカウンター行動には「集団」としての大きなテーマがある。
「奴らを通すな No Pasarán!」である。
今回は大久保公園に集合したレイシストたちを封じ込め、デモに出発させないこと、中止にさせることを目的としている。これは野間さんと「レイシストをしばき隊」の名で広く呼びかけられたもので、カウンター行動が次の段階に移っていることを示している。
切迫した問題であった「お散歩を称した新大久保周辺の商店、買い物客への嫌がらせ行為を止めさせる」、そして「レイシストのデモ隊に大久保通りを歩かせない」はひとまず成功させた。これらはレイシストをしばき隊設立の大きな動機になっているテーマだろう。
そして次は「デモをそのものを止めさせる」というわけだ。
お部屋2517/しばき隊の「暴力性」 1―-行政警察活動の根拠を作る(松沢呉一の黒子の部屋)
緊迫した状況になった大久保公園の「No Pasarán!」の動き、警備に厳しく規制された中、公園周辺に入り込んだ40人のカウンターと有田芳生議員、弁護士団の行動に関してはノイホイさんのツイートのまとめに詳しい。
動き出したデモ隊先頭の街宣車の前に座り込んだ人もいたという。
noiehoie氏の6/30大久保カウンターへの振り返り(togetter.com)
【新宿デモ】新大久保に立ち入れなかったヘイトデモ隊と、レイシズムにノーを突きつけるために集まった人々(6・30)(togetter.com)
2013/06/30 カウンター・アクション(Timeless Confused/TAKAYUKI MISHIMA)
予定時間をだいぶ過ぎてから、待ち構えていたカウンターの盛大な抗議と怒声と罵声と数多くのプラカードに出迎えられながらレイシストたちが職安通りに姿を現した。
「No Pasarán!」を全力で支持、支援しながらも、やはりどうしたって当日にデモを止めるのは難しいだろうと思っていた。これはレイスシト云々ではなく警備警察の面子にかけても強行させるだろうと思う。主張や正義とは関係なく、このミッションが警察、機動隊が人員を配備し、展開した「消化すべき仕事」である以上、そして当日規制し切れると判断した以上、やるものはやっちゃうのである。これをお役所仕事という。
しかし現場でレイシストとカウンターの間に立っている彼らは「どっちもどっち」の境界線である。彼らがいるおかげで結果的に実力行使には至らないし、彼らのおかげでレイシストとオレたちの間にも厳然たる一線が引かれている。いくら言動が「どっちもどっち」であろうとも、機動隊員や公安の方々を挟んだ「向こう」と「こっち」には別の世界が拡がっている。
オレはその境界線を踏み越える気はない。しかしデモを止めるためには「No Pasarán!」の行動と共に、個々のレイシストたちに対して「非暴力超圧力」(これは某グループ参加者の名言)を貫く必要がある。そのためには目の前にある境界線の「ギリギリ」を探りながらカウンターを続けなければならない(ギリギリの攻防を計りつつ…とにかく逮捕は負けです)。
いや、本当、警備の方々に対しては感謝する側面もあったりするのだ。レイシストの連中は守ってくれている警察とすぐに集団で喧嘩してしまうのだが、カウンターで警察と喧嘩する人はほとんどいない(いることはいる)。喧嘩せず仲良くするどころかナンパもしてしまうぐらいである。適当に仲良くしたいものです。
オレは職安通りを併走しながら怒声と罵声を浴びせ続ける。明治通り、靖国通りからはレイシストのデモ隊とは反対側の歩道からは準備したトラメガを使いながら応戦する。真横を併走するならともかく、超一級の幹線道路である明治、靖国通りの歩道からではとてもじゃないが生声では勝負にならない(最後の小滝橋通りが狭く感じた)。
カウンターはレイシストが集団下校する歩道橋しばきまで続いた。
来週、7月7日には再び新大久保でレイシストのデモが行なわれる。デモタイトル<東京韓国学校無償化撤廃デモ in 新大久保/日本人差別をなくせデモ実行委員会代表世話人 菊川かをり(日侵会)> などは伝わっているものの、コースはまだ発表されていない。
次回デモが強行された場合は、子どもがレイシストの標的になる。
この日のカウンター参加者は2500人(警察発表800人)だったそうだ。規制を求めたり、説得を試みることでレイシストたちが自主的に開催を撤回していくことが勿論一番平和な方法だ。しかし、それでもデモが強行された場合、カウンター参加者が今回の倍の5000人になればデモを中止させることもできるかもしれない。
やはり、どうしたって、数は大事です(前日に10人足らずのカウンターがあっさり警察に軟禁されて、本当に身に沁みたのだ…)。
「No Pasarán!→7.7 THEY SHALL NOT PASS.」はまだ続く。
(イースタンユースの吉野さんも現れたカウンター後の新大久保での飲み会、画像は在日中国人?台湾人?の英雄として、16日の件で台湾系のフリーペーパーの一面に掲載されたクボケンさん)
その夜、泥酔した若い衆から「レイシストの問題は大人の責任だコノヤロー」と泣きながら訴えられた。
やりましょう。
(追記 7月2日)
7月7日に予定されていた新大久保での「東京韓国学校無償化撤廃デモ in 新大久保」は中止になった模様です。
それぞれの「自分のやり方」で彼らと対峙したカウンターの皆さん、おめでとうございます!
続けていきましょう。