iPod Touchは豊富なiOSアプリを楽しめる。しかも、無線LAN接続でWiFiルーターを利用すると更にメールやネット検索をすることまで可能になる。iPhoneよりも薄くていいのだが、SkypeやVoIPによる電話アプリを使うには、どうしてもイヤホンが必要になる。iPod Touchのイヤスピーカー及びマイクロフォンの位置がiPhoneと同じならばもっと使いやすいのになあ、とお考えの方が小生の他にもいらっしゃるのではないだろうか。
では逆に、SIMフリーのiPhoneをiPod Touchとして使うことにしたらどうか、ということで試してみる。用意したのは、以前米国サンフランシスコ市内のアップルストア(実店舗)で購入したSIMフリーiPhone 4S(iOS 5.1.1)とDTI(ドリームネット)社のServersMan SIM LTEというデータ通信SIM。ちなみにiOSを5.1.1のままにしてあるのは、iOS5.1.1付属のグーグルマップアプリを使い続けたいということ及び他のアプリがデフォルトで起動するマップアプリがグーグルマップの方が実用的で便利だから。
050plusを契約してアプリをインストールする前でも後でもよいと思われるが、iPhone 4Sのネットワーク設定をリセットしておくのがお勧めだ。
モバイルデータ通信及びインターネット共有に以下を設定する。
http://dream.jp/mb/sim/support/manual/mnl_iphone4s.html
APN dream.jp
ユーザー名 user@dream.jp
パスワード dti
【通信速度】
iPhoneやAndroidスマホの場合、050plusを利用した通話に必要な通信帯域は、以下の値が目安の値となると、050plusのホームページのFAQコーナーで紹介されていた。
上り:約20kbps 下り:約20kbps
ServersMan SIM LTEの通常時の定格データ伝送速度は、150 kbps だと公表されているので、帯域は十分のはずだけれども、iPhone4Sで使用した場合どうなのかについて実際に調べてみた。路線バスで移動中の測定1回を含め、場所を変えて静止状態の室内及び屋外で、合計6回の測定値から平均を計算した結果が次のとおり。
ダウンロード 258 kbps
アップロード 273 kbps
PING 390 ms
050plusを利用するのに必要な帯域の10倍が確保されていることがわかった。これならば、050plusの発着信及び通話中にバックグラウンドでメール送受信等が発生しても余裕だろう。また、ServersMan SIM LTEの定格値よりも随分良好な成績が出ていることがわかった。
ちなみに、050plusアプリ以外のアプリを利用するにあたって、258 kbps / 273 kbpsという性能はどうかと言えば、LTEの帯域を十分使える状況に比較すると、明らかに低速なのであるが、全然ダメとまでは言えない程度には使える。グーグルマップを歩きながらナビ的に使うことはできないが、静止状態で地図を確認する程度ならOKだ。また、ストリートビューでパンできるから使えるレベルにあると言ってよいだろう。ファーストクラスでなくてよい、エコノミークラスでよいという考えで割り切って使うならば十分に選択肢となるだろう。
【発信テスト】
WiFi/3Gともに良好。気づいたことは、3G携帯電話回線契約で発信するよりも電波が安定している状況でないと発信できない。また、050plusのホームページでちゃんと説明されているとおり、0120や177等、かけることができない番号がある。ちなみに、FUSION SMARTalkでは177にかけることができるが050plusではかけることができない。それから、たまたま今回の実験でそうだっただけかもしれないが、080や090から電話をかけるときよりも移動に弱い感じがした。070のPHSよりは切れにくい感じがした。あくまでも、テストしたときの感じ。
【着信テスト】
移動体通信では、発信よりも着信の難易度の方が高い。移動速度にもよるが、移動を完了したあと電波状態のよい場所で静止している場合、比較的確実に着信してくれる。それでも 070, 080, 090での着信に比べると呼損率が高めという印象だ。歩きで移動中くらいならちゃんと着信する。自動車で街中を40km/h程度で移動中もほぼ同じ感じ。
東海道線の戸塚あたりを走行中(70km/h程度かそれ以上出ているように感じた)の車内で、発着信試験をしてみた。発信側は保留音楽を流し、着信側はイヤホンでそれを聞くという試験なので、ひとりで実験可能だ。発信側はドコモの通話回線契約の端末。iPhone4S+ServersMan+050plusの環境への着信は、iPhone4Sのアンテナピクトが全部または一つ欠けた程度に安定して電波がある場合には、しっかり着信したが、アンテナピクトが2~3本程度で本数が変化しているような状況だと、4回に1回は着信しなかった。発信もほぼ同様な感じだった。通話品質は意外に安定していて良好。ただし、エッジでない昔のPHSを歩いて移動しながら通話している感じ、即ち1分に1度2秒間程度音がぐちゃぐちゃになって聞き取れなくなる。これだと、文脈から問題にならないこともあるが、聞き返さないと解らない場合もあるだろう。
iPhoneの場合、フォアグラウンド又はバックグラウンドで050plusアプリを起動しておく必要がある。それが面倒だという意見もあるようだが起動してなければ着信しない、すなわち、複数のiOSデバイスに050plusアプリをインストールしておき、選んだひとつのiOSデバイスでだけで050plusアプリを起動しておけば、そのiOSデバイスにだけ着信する。従って、050plusアプリをうっかり複数のiOSデバイスで起動させてしまっていると、着信させたいiOSデバイスの電波環境が悪くなっていると、別のiOSデバイスで起動中の050plusアプリへ着信してしまうことがある。この場合、呼び出し側には呼び出し音が聞こえることになり、一向に電話に出てくれないという状況になる。
050plusのことではないが、参考までに触れておく。VoIP電話サービスは、市場にたくさんある。FUSION SMARTalkもその一つだ。050plusは税抜き300円の基本使用料がかかるが、SMARTalkの方は基本料0円だ。また、SMARTalkはいわゆるプッシュ着信機能に対応している。プッシュ着信というのは、SMARTalkアプリを起動してなくてもプッシュ信号が送られてきて着信するという機能だ。話を聞くとたいそう良い機能だが、あまり触れられていない落とし穴がある。プッシュ信号は、メールのプッシュ受信ならば、20秒や30秒くらい最悪数分程度の遅延でも実用上は致命的になることは稀であるが、音声通話の着信プッシュがそれでは致命的だが、結構そういうケースがあって、着信しないという状況が発生する。プッシュ対応のSMARTalkアプリは、インストールしてあると起動してなくても着信する状態なので、複数のiOSデバイスに入れておくというわけにはいかないので、050plusのような柔軟な使い方はできない。SMARTalkの音質は050plusよりも良い気がするが、そのぶん帯域を使うので、電波の悪さに対する耐性及び遅延時間は、050plusの方がSMARTalkよりも実用性が高いと言える。
【電池のもち】
iPhone4S上で050plusを起動しておかねばならないので、どれほど電池を食うのかと調べた。就寝前に100%充電状態にして、終了可能なアプリは全部終了させて、050plusだけバックグラウンド起動状態にして調べてみた。23時35分に見たとき100%だったものが次の日の7時28分に見たら95%だった。数分は誤差範囲とみなせば、8時間で5%消費した勘定になるので、100%使い切るのに160時間という計算になり、連続待受け時間は160時間だと予想できる。音声通話回線契約の最近のスマホでない携帯電話は350時間~700時間程度なので、それに比較すると160時間は短いと言えるが、いわゆるスマホ(Androidだが)で350時間~1000時間と言っていても実際は、メール、ネット検索、路線案内、カレンダー等を見ていて、毎日充電しているのではないか。最近この実験のために、050plusを起動状態でiPhone4Sを持ち歩き使用しているが、就寝前に100%まで充電してそのまま電源を切らずに次の日の持ち歩いて、20時頃帰宅するまで電池がもつ。その間、メール、ウェブ検索、地図、路線案内、通話を少々している。Android 1.6や2.3の頃は、電池が半日持てばいい方だったのに比べれば、“iPhone4S+SMSオプション付きデータ通信専用SIM+050plus”の組み合わせ使用スタイルは、十分に実用範囲に入っていると思う。
更に実験した。050plusアプリを終了させて、23時50分に100%フル充電状態としたものが、次の日の朝6時30分にみたところ96%であった。そして次の日、050plusアプリを起動してバックグラウンドにして、23時に100%フル充電状態としたものが次の日の朝6時30分にみたところ93%であった。この結果から、iPhone 4S (iOS 5.1.1)で050plus (Version 4.1.1)を起動しておくと、起動していない場合に比べて36%電池の持ちが悪化することがわかる。
【総評】
もはや実際に比較することは不可能だが、大昔のアステルPHSに比べたら、発着信共に、ずっとましかもしれない。現在のPHS及び携帯電話で音声通話の着信待ちをするスタイルに比べると確実性は落ちるような気がするが、昔のPHSより確実性は高い感じなので、維持及び運用コストとのバランスで、ある程度の不都合を許容するスタンスで臨むことができる場合には、実用になるという判断も可能だろう。
【NTTコミュニケーションズへの注文】
以下は、NTTコミュニケーションズへの注文なので、NTTコミュニケーションズのホームページの質問サイトに書き込み送信済みであるが、ここにも掲載しておきたい。なぜならば、下記の注文は、NTTコミュニケーションズの050plusのFAQコーナーで扱われており、解決方法が存在し、FAQとして扱われているからである。NTTコミュニケーションズのそのFAQにある解決方法は、全く機能せず、解決にならないから、下記は、かなり丁寧に繰り返して書いている。
iPhone 4S のボリュームボタンの上側に、いわゆるマナーモードスイッチがある。このスイッチでマナーモードにすると、着信音が鳴らなくなると同時にバイブレーションが働くようになるというのが iPhone の標準的な操作性である。ところが、050plusアプリは、そうならないので困る。
すなわち、050plusアプリの「アプリの設定」の「着信の設定」にある「着信音のオン/オフ=スイッチ」と「バイブレーション=スイッチ」についてである。
「着信音のオン/オフ=スイッチ」をオン、「バイブレーション=スイッチ」をオン
にしてあるときに iPhone 利用者が期待する挙動は、iPhone 4S のボリュームボタンの上側にあるいわゆる機械式マナーモードスイッチをマナーモードにすると、着信音が鳴らなくなってバイブレーションが働いてくれること。そして、機械式マナーモードスイッチをマナーモード解除にすると、050plusアプリの設定をいじらなくても着信音(050plusアプリの「アプリの設定」の「着信の設定」にある「着信音設定」で設定した音)が鳴りバイブレーションは働らかないようになってくれること。である。ところが、050plusアプリ(Version 4.1.1)は、そういう挙動をしてくれないから困るということである。
050plusアプリ(Version 4.1.1)は、どういう挙動をするのかと言えば、
「着信音のオン/オフ=スイッチ」をオン、「バイブレーション=スイッチ」をオン
「iPhone 4S の機械式マナーモードスイッチをマナーモードにする」
にしてある場合、着信すると期待どおりに着信音が鳴らずにバイブとなる。ここまではOKなのだが、050plus着信通知表示をスライドしてやると050plusアプリがフロントに現れて、「拒否」「応答」ボタンが表示されて着信音が鳴り出してしまうのが iPhone の操作性として違うわけである。「iPhone 4S の機械式マナーモードスイッチ」をマナーモードにしてあるのに着信音が鳴りだすのがダメだということだ。
しかたがないので、小生は、上記が改善されるのを首を長くして待ちつつ、次の設定で使用している。
「着信音のオン/オフ=スイッチ」をオフ、「バイブレーション=スイッチ」をオン
にして、「iPhone 4S の機械式マナーモードスイッチ」によらず050plusアプリだけ常にマナーモードで運用している。この運用で不便なのは、050plusへの着信で着信音を鳴らしたい場合には、050plusアプリ内で「着信音のオン/オフ=スイッチ」をオンにする必要があることだ。その場合「iPhone 4S の機械式マナーモードスイッチ」の状態と矛盾を生じているのが使いづらいということだ。
【補足】
ServersMan SIM LTE
初期費用(契約手数料)3,150円
月額料金 490円/月
SMSオプション 150円/月
オンラインで解約できる。
ServersMan SIM LTE の解約は、MyDTI(ホームページ)で手続き可能。
速度切替サービスがある(利用料金は以下のとおり)
100MB 262円
500MB 1,312円
1GB 2,625円
高速通信容量の有効期限は申し込みから6カ月後の月末。
高速に切り替えるためのiPhone用アプリがリリースされているが、iOS6以降でないと使えない。小生のiPhone4Sは、あえてiOS5.1.1のままにしているので速度切替できない。
ServersMan SIM LTEのランニングコストは、iPhoneでアンテナピクトが立つようにSMSオプションをつけて月額640円ポッキリ。さらに050plusの月額基本料金の300円(税別)を足して、940円(税別)で、ネットつなぎ放題+テザリング+音声通話のモバイル環境を維持できる。
小生は、どこでも3G接続でかまわないのだが、もう少し帯域が必要だったり、可能ならば無線LANホットスポットではWiFi接続で利用したい場合には、月額で300円程度追加で支払ってどこかのWiFiホットスポット接続サービスを契約するか、あるいは最初からビックカメラSIMのような無線LAN接続サービス込みの契約のあるSIMにすればよいだろう。
【おまけ】
バックグラウンドで起動しておくのではなく、着信をプッシュ通知で知らせてくれるのがいいんだという書き込みをネットで見かける。たしかに、そうすれば、アプリを起動していなくても着信できるし電池の節約にもなるだろう。しかし、iOSデバイスへやってくるプッシュ通知は、電話の着信に使える程早くはないのだ。プッシュ通知が来てからVoIPアプリを起動して電話接続処理をするのに時間が掛かり過ぎるのだ。ヘタすると40秒くらいかかる。そんなに長く呼び出し音を聞きながら待っている人は少ないのではないか。更に、そのプッシュ通知というやつは、損失してしまい端末まで届かないことが結構あるのではないか。だからFUSION SMARTalk IP Phoneの着信が050plusに比べて呼損率が多いのではないか。