ぼくは行かない どこへも
ボヘミアンのようには…
気仙沼在住の千田基嗣の詩とエッセイ、読書の記録を随時掲載します。

波止場のエディ 気仙沼2005 Ⅶ 港の珈琲ハウス

2021-03-05 21:25:42 | 波止場のエディ
 南気仙沼駅を降りて、真正面、駅前広場の真ん中に、落合直文の歌碑がある。
 「砂の上にわが恋人の名をかけば波のよせきてかげもとどめず」
 そのまま、まっすぐ、駅前大通りを歩いていくと、海の市があり、魚市場があり、港がある。
 気仙沼湾、世界の海を航海するまぐろ漁船が係留する気仙沼漁港。
 岸壁沿いの道路に面した珈琲ハウスの、窓際のテーブルに向かい合って、
「エディ、あなたの名前を、ガラスの上に書いて、拭き消した。」
「エリカ、俺の名前を消さないでくれ。」
「あなたの名前を、私だけのものにしたかったから。」
 エリカは、窓の外の、船尾を並べた漁船たちを眺めながら、コーヒーカップに手を置く。

注1)街の中心部にある落合直文の歌碑は、震災前、もう一カ所あった。内湾のエースポート脇の公園である。そこには、『港町ブルースの歌碑』もあり、その後、港町海の道内に移設された「世界一のマグロの貯金箱」もあった。内湾の直文歌碑の歌は、「さわさわとわが釣りあげし小鱸(おすずき)のしろきあぎとに秋風のふく」である。
注2)岸壁沿いの珈琲ハウスというのは、全くの架空である。そんな場所があったなら、と、当時、私は夢見ていた。だから、渡辺謙さんが、Kポートを作ってくれた、その後、アンカーコーヒーの内湾店がオープンした今は、まさに夢をみているような心地である。
注3)付録として、詩集湾Ⅱ(1993年)から「アズマエビスの凱旋」をご覧いただきたい。


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