柚月裕子の『ウツボカズラの甘い息』を読んだ。550頁弱の長篇ミステリー。
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お話は、二児の母親の文絵が中学の同級生と再会し彼女のビジネスを手伝うことになる様と、鎌倉の貸別荘で起こった殺人事件の捜査とが並行して描かれる。ふたつのお話の接点は鎌倉の別荘というだけ。どこで収れんするのかと思いつつ読んでいたのだが・・・。著者の巧さがよく表れている作品で後半の二転三転する展開にページを繰る手を止められずに一気に読了。こりゃ面白い!読み応えあり。以下ネタバレなので未読の方は読まないように。
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文絵が解離性障害を患っていて妄想癖があるのがこの作品のキモで、文絵の二児がすでに亡くなっていることが判明してから急転直下。前半に文絵の視点で語られていたお話が文絵の妄想だと思わせるのが読者を惑わせる。サングラスの女は文絵の妄想なのか実在するのかがポイントで、捜査がすすむにつれてお話の終盤は驚きの事実が次々と出てきて・・・。それまでは文絵と刑事の秦の視点で語られた物語なのだが、最後はサングラスの女の独白で〆られているのが特徴、なかなかに興味深い独白。ちと蛇足な感じは否めないが、面白く読める作品だ。
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