ミセスローゼンの上人坂日記

香港のダイヤモンドのやうな夕立



北京ダックディナーの時間まで、今年も又ペニンシュラホテルでウインドウショッピング。ニックは時計店、私は「Graff」という宝石店が楽しみなのだ。ガードマンに「入ります」と告げると中に連絡され、観音開きの扉の鍵が解除され大きく開かれ、往年の香港映画のスターみたいな人が迎えてくれる。執事みたいに慇懃に微笑み、私の小粒ダイヤのネックレスやイヤリングには一瞥もせず、素敵な英国訛りで案内してくれる。チューリッヒのGraffにも入りました、と私がミーハーぶりを披露し、ニックはコストコの宝石売場の話をする。執事はあくまで礼儀正しく首を傾げて居る。コストコを知らない人も世界には居るのである。名店街を一回りしてもなお一時間あるのでバーに入ると、バーテンダーが緑白色のカクテルを注いで居るところ。「それは何ですか?」「グラスホッパーです。」世の中にはキリギリスという名のカクテルもあるのだなあ。どんな奴が飲むのだらうと見ると、太った若いET長者みたいな男性が一人でカウンターに座って居る。私とニックは「ロールスロイス」という甘めの赤いマティーニを頼む。
「二日酔いにならぬやう、これを飲んだら後はハーフボトルの赤ワインで鴨を食べよう」という相談から、二日酔いの為の朝食「エッグズベネディクト」はNYのウォルドルフアストリアホテルで発明されたんだよ、という話になり、「そう言えばシーザーサラダはどこで発明されたんだっけ?」とニックが聞き、私が知らないと答える前に、横でグラスホッパーをちびちび飲んでいたET長者風の男性が、「メキシコのティファナです。」と大声で呟いた。「そうだそうだ、ティファナだ!」とニックが身を乗り出し、シーザーサラダ談義となった。ロビーと名乗るその男性は、子供の頃ティファナにあるシーザーサラダ発祥の店でシーザーサラダを注文した父親からその話を聞いたそうだ。それからスキーの話、音楽の話をする頃には皆ゴキゲンに酔って居た。あっという間に一時間が経ち、ニックが、「僕たちこれから北京ダックを食べに上のレストランへ行くんだけど一緒にどう?」と誘った。ロビーの答えを聞いた時の、ニックの顔がまた見ものであった。わははははは。
「すごく行きたいんだけど、僕はユダヤ人だからコーシャー(※)ダックしか食べないのです。」
もしかするとロビーは、我々の事を、金持ちをカモにして世界を稼いで回ってる夫婦詐欺と思ったかもしれないなあ。

(※)コーシャーとは、ユダヤ教の食物の清浄規定に適合した食べてよい食物のこと。
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