「オーディションやコンペティションを目指すなら、六番プレリュードはマスト。四番、五番をまだ仕上げてなくても、六番プレリュードが弾ける事を見せれば十分なのだ。チェロのテクニックの難易度で言うと六番プレリュードはあそこ、その他の組曲はここ。」と、ニックは天と地を指差した。
「ピアティゴルスキー先生が、若いうちに六番を習得するよう僕らを励ました、いや厳しく強制した。どれほど練習してもOKが出なかった。しかし一度物にすれば、どのコンペティションにも六番を弾いて勝つ事が出来た。ロカテッリ・ソナタの華麗なアップボウ・スタカートを見せられるより、むしろ六番プレリュードを見事に弾き切るチェリストに感動する、僕が審査員ならば。」
ニックが78年のチャイコフスキー国際コンクールに六番プレリュードを弾いた時、これと同じ感想を言ってくれたのが、あのダニール・シャフランだったそうだ。