私が一番面白かったのは、先生がハイドンチェロ協奏曲第2番について、ドイツのTV番組の為にドイツ語で語っている録音。リヒャルト・シュトラウス本人の指揮で、ハイドンコンチェルト2番とドンキホーテの二本立演奏会のリハーサル場面。以下ピアティゴルスキー先生の台詞。
私が自作のカデンツァ※を弾いたら、シュトラウスが、「それは誰が作曲したのかね?」と怪訝な顔で聞いてきたので、思わず私だとは言えず、「エーミール・シュマールです。」と出鱈目な名前を教えてしまった。シュトラウスは真面目な顔で、「私ならもっと良いカデンツァが書ける。」とその場でサラサラと楽譜を書き、私に弾かせた。弾いていると途中から『ティル・オイレンシュピーゲル※』のメロディーになり、オーケストラ全員が腹を抱えて笑った。シュトラウスが、「シュマールのほうがマシだな。シュマールのカデンツァでいこう。」と言い、また大笑い。私のカデンツァもそう悪くはなかったわけだ。
※カデンツァとは本来、独奏協奏曲やオペラのアリアなどの中で、オーケストラの伴奏無しの即興的独奏。良いカデンツァは楽譜に記録され繰り返し演奏される。一曲につき複数のカデンツァが存在する事が多い。(ハイドンチェロ協奏曲1番にはナサニエル・ローゼン・カデンツァもある。)
※ リヒャルト・シュトラウスの交響詩『ティル・オイレンシュピーゲルの愉快ないたずら』(1895年)。
テリーの解説を耳で聞いただけなので、間違いがあったらごめんなさい。