昨日は英米流「腐敗」との付き合い方についてお伝えしました。
今日は小泉「劇場政治」の大罪についてお伝えします。
最初の書き出しが刺激的です。
「近年の日本の政治状況を振り返ると、「子供が動かす幼稚な国家」という言葉がどうしても浮かんでくる。特に、政治のリーダーたちが価値観や思想において完全に「メルトダウン」しているのではないか、という危惧を覚えるのだ。
そもそも小沢氏が多額の政治資金を集めるなかで、その手法に旧田中派的な利権政治の要素が色濃く残っていることは、これまでにも幾度となく指摘されてきた。しかし。所属政党たる民主党は何の手も打ってこなかったし、、小沢氏もそれを改めようとはしていない。与党たる自民党も、自らの中に同様の利権構造を抱えているためか、そうした小沢氏の問題を真剣に追及しようとはしてこなかった。メディアもまた同様である。つまり、検察の強制捜査や秘書の逮捕に至る以前に作動すべきチェックシステムがまったく働いていなかったのである。」
この文章をどう感じるかですが、政治家が自浄作用を発揮しない理由は、「政治資金を集めるにはある程度のことは致し方ない」、などという暗黙の了解や理解が与野党を問わず政治家同士にあるような気がしますし、マスコミも「しかたがないか?」というような感じで受け止めているのだと思います。
小生なども国会議員ではありませんが、普段は相容れない政党の政治家同士がある種の仲間意識みたいなものをもっているのではないかと感じたことが何度かあります。
そうした政治家の自浄作用がない現状を先生は「子供が動かす幼稚な国家」と言ったのだと思いますが、では「大人が動かす国家」とはどういうものかということになります。
それを先生は、次のように述べています。
「成熟した民主主義体制とは、さまざまな矛盾や混乱などを抱えつつも、その矛盾や腐敗がまだ大きくならないうちに発見し、着実に対処を行なうべきものだろう。」
「ところが日本では、いきなり事件が発覚し、マスコミのカメラの放列の前ですべてが進行する。そして、メディアに煽られた感情的な世論の後押しに応えるかたちでないと、事態は進まなくなってしまっている。これこそまさに「究極の劇場化」である。」と述べています。
先生は、小沢氏の捜索に当たる検察のことを「「劇場の主役」として「いま俺が舞台に上がるんだ」という稚気に似た風情すらにじみ出ていた。」といい、「また涙交じりの声で「代表続投」を表明した小沢氏も、やはり周囲のこしらえたシナリオに沿って劇中の登場人物になろうとしているかのようだった。」と述べています。
そして「この日本政治の「劇場化」を現在の究極形態まで押し進めた元凶は、言わずとしれた小泉純一郎元総理であった。」と批判しています。
「小泉政治の功罪として、郵政民営化などの構造改革の是非が議論んの対象となるが、私は、小泉氏によって切り拓かれた究極の劇場政治が国民の精神構造に及ぼした破壊的な影響、そしてその結果としてのマスコミと国民の危ういほどの幼児化を促進したことの方が、はるかに罪は重いのではないかと考えている。そのあとに残されたものが、政党政治に対する国民の根本的な幻滅だったからだ。」と断定しています。
小泉氏に対しては、小生などは、歯切れの良い言葉で「ガンガン」ものを言って、自分がやりたい郵政民営化や労働の自由化などを実現した人だと思っていました。
さて、最後に先生はいくつかの具体例を挙げて日本の危機を訴えています。
『日本にとって非常に危険なのは、国内における政治の「メルトダウン」が、リーマンショックに象徴される掛け値なしの「世界史の激動期」と重なり合っていることだ。
これは日本にとっては60年ぶりのきわめて厳しい事態といえる。もはや同盟国アメリカでさえ、日本の立場に配慮してくれる余裕はなくなっている。それを端的にあらわす事件が相次いで起きている。
二月二十八日、中国を訪問していたアメリカ国防総省のセドニー次官補代理が、尖閣諸島の帰属やその地位に関してアメリカは日本を支持しない、中立を守ると発言したのである。それに対して、麻生首相自ら「アメリカの見解に変更がないことを確認した」と予算委員会で答弁したのである。
これは驚愕に値する”事件”であった。日本政府が「日米関係は、安全保障の基本的な取り決めについてその都度、確認をしないといけないような状況にある」と世界に広言してしまったのと同じである。たとえ対米確認をしていても、最低限、水面下に留めておくのが国際社会の常識というものだ。
一方の小沢氏も2月末、「今のこの時代、第7艦隊以外に在日米軍はいらない」と口走っている。
こうした事態を目の当たりにするにつけ、「子供が動かす国」という言葉が、また私の脳裏をよぎる。
世界危機のなかでいま、アメリカと中国は国運をかけた「大人のゲーム」に激しく火花を散らせている。アメリカは経済危機から脱するためには、中国に米国債を買ってもらうしかないが、アメリカの覇権には口出しはさせない。
一方、中国は「ドル基軸」体制の後を見越し、米中協調を謳いながら空母建造でアジアの海の覇権に手をかけつつある。北朝鮮のミサイルどころではないのである。
こうしたかってない苛烈な内外の状況下で、日本だけがとめどもなく劣化する「子供の論理」で動いていることがいかに危険なことか。
いま日本にとっての急務は、「大人の民主主義国」として備えているべき精神的な「安全装置」をいかに回復させるか、という点に尽きる。制度の整備だけではなく、政治指導者、マスコミ、ひいては国民人一人が精神、価値観の面で深く成熟することなしには、昭和初期の悲劇が、形を変えて、この国を襲うことになるのは必定と思えるのである。』
と結んでいますが、皆さんはどのように思われたでしょうか?
小生も、劇場型人間なのか怒りっぽく単純な発想で物事を見ることが多いようです。とても精神、価値観の面で成熟しているとは言いがたいと反省しています。
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