Toshiが行く

日記や趣味、エッセイなどで描く日々

侮るなかれ

2021年03月10日 15時24分27秒 | エッセイ

                       
      
      カラスが頭の良いことはよく知られている。
      固いクルミをわざと車に轢かせて、割れて出てきた実を
      さっさと咥えて飛び去るといったことも知られた話だ。
      ゴミ捨て場が荒らされているのは、よく見かける光景だが、 
      どんなにカラスを近づけないよう工夫しても、
      そんな人様の知恵をあざ笑うかのように被害が再発する。
      どうやら人間の言葉も理解できるとさえ言われ、
      何と7歳児の知能を持っているとか。
      それだからだろう。なんと傍若無人な鳥なことか。

      今朝もマイカー出勤だ。
      福岡市随一の繁華街・天神の大通りを左折し、
      一方通行の脇道に入った。
      ここを抜けると別の大通りに出るのだが、
      左折した途端立ち往生となった。
      図々しいほど車馴れ、人馴れしたカラスが
      道路の真ん中まで出てきて
      餌をつついて回っているのだ。
      前夜、不心得な飲食店が道路脇に置きっ放しにした
      ゴミ袋をつつき破ったため道路に散乱してしまい、
      それらを追って人が通ろうが車が来ようが逃げようともしない。
      運転席から見えなくなるまで車の直前をうろつき回るので、
      轢きはしまいかと、何とも気ぜわしい。

           

      そんなカラスも、たまにミスをするらしい。
      沖縄県の西表島を訪れた時のことだ。
      うっすらと明け始めた中、レンタカーを走らせていた。
      と、突然樹上からカラスが急降下してきて
      フロントガラスに激突、
      そのまま車に巻き込まれたように見えた。
      行き過ぎ、バックミラーで伺えば、
      黒っぽい塊が道路の中央に横たわっている。
      間違いない。はねてしまったのだ。

      カラスは、車が通りかかっただけで、
      車との距離感が分かるのだそうだ。
      ただ、この西表島は普段の交通量がそれほど多くはない。
      とあって、この島のカラスたちは、町中のカラスほど
      車馴れしていないに違いない。
      このカラスも道路上の何かしらの餌を狙って急降下したものの、
      こちらとの距離・スピード、それと自分の飛ぶ速さを測り損ね、
      こんな事故となってしまったのだろう。

          
      
      うぶと言えばうぶな西表島のカラスに比べ、
      天神をテリトリーとするカラスたちの
      何と世間ずれしていることか。
      これほど人を小馬鹿にしたような態度をとるのは、
      車馴れ、人馴れしているからであろう。いや待て。
      あるいは車に付けたオレンジ、黄、黄緑、緑色が四つ葉型の
      『もみじマーク』のせいなのかも……。
      ここのカラスたちは、車体の四つ葉マークを見て、
      「爺、恐るるに足らず」と侮っているのではあるまいか。
      そう思うと余計に腹が立ってくる。