デビューと言っても、
華やかな世界に踏み出したわけではない。
むしろ、多少うっとうしく、面倒臭くもある。
だが、今の世の中、うっとうしくとも、面倒臭くとも、
そこから逃れるのは難しい。
そんな仕組みが日一日と強化されている。
そして、
「さあさあ、お早く新たな世界へ踏み出してください」
商魂たくましく、うるさいほどに催促する。
抵抗むなしく、ついに負けた。
長年いとしおしく付き合ってくれたガラケーは
廃棄処分となり、やれやれのスマホデビューである。
そもそも携帯電話に多くを望んではいない。
通話、それにちょっとばかりのメール、
もう少し欲を出せば、
カメラとウオーキングをする際の歩数計、
これだけの機能があればよい。
何だか蔑まれたようにも聞こえるガラケー、
これで不自由ないのだ。
そう自分に言い聞かせ、納得させてきた。
だが、技術の進歩は我々高齢者には思い及びもしない
新たな、多くの機能を持つスマートフォンを生み出し、
ガラケーを駆逐していき、なお戦線を拡大し続けている。
加えて、菅総理が就任早々、
世界各国に大きく取り残されている
日本のデジタル化に国挙げて取り組むことを宣言し、
一方で携帯電話料金の引き下げを大手各社に促した。
その結果、猛烈とも言える料金引き下げによる
顧客獲得競争が起きている。
その最大の標的となっているのが、
ガラケー族の僕たち高齢者。
「スマホデビュー」なぞと、小賢しい言い方までして
スマホへと誘い込む。
あの手この手の催促メールはひっきりなしだ。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/58/61/00b7d8044e9ef383abb18b0699f6e798.jpg)
その手に乗るかと意地を張ってみても、
世の中はそれを許してくれない。
ガラケーでは無理でもスマホだとすんなり通る
便利さばかりの世の中になっているとあれば……
デビューもやむなしか。
そんな心境で白旗掲げ、現実と向き合った。
しかし、契約手続するだけでも面倒臭い。
2時間半ほどもかかった。問題は操作法だ。
画面にはたくさんの絵図が並んでいる。
何が何やら、僕ら高齢者が簡単に覚えられるはずもない。
デビューしたての人相手の
「スマホ教室」に通うしかあるまい。
河島英五が「似合わぬことは無理をせず」と歌っていた。
「そうだよな」と相槌を打てば、
「それは『時代遅れ』という歌ですよ」と返された。