Toshiが行く

日記や趣味、エッセイなどで描く日々

亡国論

2021年03月20日 11時12分59秒 | エッセイ

        

      30歳前後だったから50年ほど前の話だ。
      職場でゴルフはご法度だった。
      役員でもあった職場の局長が、
      「狭い国土の日本で、あれほど広い土地を占有し、
      一部の裕福な人間が遊興にふけるなぞ言語道断。
      君たちは決してゴルフはしてはならぬ」
      そうゴルフ亡国論をのたまわった。
      まるで戦時中でもあるかのように……。
      直属の長である人からそう言われると、
      「はい、分かりました」と言うしかない。

        

      もっとも、当時の給料ではゴルフ用具を買うことも、
      プレー代金もそう簡単には手が出なかったのだから、
      従順なふりをしたまでだったのかも知れない。

      後にその局長は営業セクションに転属。
      すると、ゴルフは取引先との欠かせない交際術となり、
      自ずとゴルフは解禁となった。
      「あの方のゴルフ亡国論はその程度だったのか」
      心中秘かに嘲ったりしたものだ。

      一方で職場麻雀はフリーだった。
      もっとも、勤務時間中というわけでなく、
      就業時間が終わると、片隅に置いていた麻雀卓を
      そそくさと引っ張り出し、示し合わせていたメンツで囲む。
      大きな声では言えないが、ごく自然に金銭が行き来した。

             
    
      僕らはそんな世代だ。
      ご法度だったゴルフは、今では当たり前の娯楽。
      僕自身はやらないが、麻雀は相変わらずだ。
      皆、とっくに定年を過ぎており、
      たまに「おい、どうしている」と電話すると、
      ジャラジャラ音を電話に入れながら
      「ちょっと待て。今忙しい」と切る。
      それか電話にはまったく出ない。
      芝生の上でクラブを振っていれば、それは無理だろうな。
 
      そう言えば、同じ職場の若い社員から
      ゴルフの話はよく聞くが、
      麻雀を誘い合う話はあまり聞かない。
      今の若い人は麻雀はしないのだろうか。