30歳前後だったから50年ほど前の話だ。
職場でゴルフはご法度だった。
役員でもあった職場の局長が、
「狭い国土の日本で、あれほど広い土地を占有し、
一部の裕福な人間が遊興にふけるなぞ言語道断。
君たちは決してゴルフはしてはならぬ」
そうゴルフ亡国論をのたまわった。
まるで戦時中でもあるかのように……。
直属の長である人からそう言われると、
「はい、分かりました」と言うしかない。
もっとも、当時の給料ではゴルフ用具を買うことも、
プレー代金もそう簡単には手が出なかったのだから、
従順なふりをしたまでだったのかも知れない。
後にその局長は営業セクションに転属。
すると、ゴルフは取引先との欠かせない交際術となり、
自ずとゴルフは解禁となった。
「あの方のゴルフ亡国論はその程度だったのか」
心中秘かに嘲ったりしたものだ。
一方で職場麻雀はフリーだった。
もっとも、勤務時間中というわけでなく、
就業時間が終わると、片隅に置いていた麻雀卓を
そそくさと引っ張り出し、示し合わせていたメンツで囲む。
大きな声では言えないが、ごく自然に金銭が行き来した。
僕らはそんな世代だ。
ご法度だったゴルフは、今では当たり前の娯楽。
僕自身はやらないが、麻雀は相変わらずだ。
皆、とっくに定年を過ぎており、
たまに「おい、どうしている」と電話すると、
ジャラジャラ音を電話に入れながら
「ちょっと待て。今忙しい」と切る。
それか電話にはまったく出ない。
芝生の上でクラブを振っていれば、それは無理だろうな。
そう言えば、同じ職場の若い社員から
ゴルフの話はよく聞くが、
麻雀を誘い合う話はあまり聞かない。
今の若い人は麻雀はしないのだろうか。