肩や腕を優しく撫でてくれる。
そして、手が重なる。
この感触、何十年ぶりのことであろうか。
動悸がちょっと早くなる。
緊張で固まっていた体の力が、すーっと抜けていく。

3カ月検診の診療室。
この日は、ちょっと痛い検査が入っていた。
もう何度も経験していることではあるが、
いつものように緊張する。
横に立って、優しく慰めてくれる看護師さんの手が、
肩や腕を撫でてくれ、時に手が重なる。
束の間であるが、苦痛が去る。
「大丈夫ですか」「もうすぐ済みますよ」
その声に励まされ、何とか持ちこたえた。
看護師さんのことをよく「白衣の天使」という。
近代看護教育の生みの親と称される
フローレンス・ナイチンゲール。
その名言の一つは、こう言っている。
「天使とは、美しい花をまき散らす者ではなく、
苦悩する者のために戦う者である」
ありがとう、看護師さん。

だが、検査結果は……。
診察室で対面した医師は、無情であった。
「がんが再発していますね。手術しましょう」
5月に4度目の膀胱がん手術を行うことが決まった。