ある県の知事をされ、
後に総理大臣にまでなられた方であるが、
あまり良い印象が残っていない。
知事時代にお会いし、お話を伺ったことがあるのだが、
僕がまだ若輩だったこともあったのだろう、
終始上から目線で対応され、うんざりし、
嫌気がさしたものだ。
そんなことがあり、
世間の評判ほどに僕自身は、
その言動をあまり信頼できなかった。
プライド──誇り、自尊心、自負心。
人として持つべき大事なものだ。
だが、何事も「過ぎる」のは禁物。
高過ぎると、自己中心的で独善的、
上から目線の傲慢な態度で周囲から煙たがれる。
件の知事は名門のご出身であり、
広く名も知られた方だから
プライドが高いのは当然だろうが、
それがちょっと「過ぎた」ように、僕には思えた。
このような「過ぎた」人は、世間には結構多い。
「東大出身だ」などと高学歴をひけらかし、
あるいは高級官僚経験者、
さらには一流企業の役員等々……
社会におけるステータスを「どうだ」とばかり
周囲に見せつける。
そんな態度に周囲はうんざりしているのを
知ってか知らずか……。
実は、そういう人は結構繊細で、
傷つきやすい性格なのだそうだ。
だから、他人から傷つけられることを嫌がり、
自分を防御しようとして独善的、威丈高になるという。
つい最近も、東大─高級官僚出身の方と
お話する機会があった。
周囲から「プライドが高い」と言われている方だが、
あの知事さんほどのことはなく、ほどほどであった。
「低すぎる」と軽蔑されかねないし、
世における身の処し方はなかなかに難しい。