「良い本」の条件はいろいろありますが、とりあえず今日思いついた一つの条件を忘れないように書いておきます。
・その本の著者が参考書として読み紹介してくれた本も、こちらが読みたくなるような本。
【ただいま読書中】『ル・マンのフェラーリ』ドミニク・パスカル 著、 中村恭一 訳、 企画室ネコ、1988年、4800円
「1949年」は、ル・マンとフェラーリ双方にとって重要な年だそうです。10年の中断をはさんでレースが再開された年であり、フェラーリがこのレースに初参戦した年なのです。フェラーリから参加したのは、小さな赤いレーシングカーが二台。一台(カーナンバー23)は53周目にリタイアしましたが、もう一台(カーナンバー22)は24時間走りきり、優勝をしました。ドライバーはキネッティとセルスドンでしたが、キネッティはなんと22時間運転しています。ちなみに走行距離は3178.299km、平均速度132.420km/h。なんとも鮮烈な“デビュー”です。
「フェラーリ」といえば「赤い跳ね馬」と脊髄反射的に私は答えてしまいますが、本書は残念ながら白黒ですので、車が赤いかどうかは私には判断できません。だけど脳内で赤色を補完しましょう。
本書は、1949年から1984年まで、毎年のレースを数ページずつ使ってフェラーリの写真と写真の解説で構成されています。特筆すべきは、参加したフェラーリの車すべての写真を紹介しようとしていることでしょう。どれも形は同じでナンバーだけが違うのですが……って、1956年にはなぜか一台「ブルーと白のフェラーリ」が混ざっていますが。
ジャガーとフェラーリが上位の常連となります。55年にはメルセデスが挑戦しますが、観客席に車の残骸が飛び込むという大事故を起こし81人が死亡してしまいます。
車の形がどんどん美しくなっていきます。流線型が多用されて、レースではなくて黙って走るだけでも観客の目を奪ったことでしょう。
60年にはGTカテゴリーに屋根つきのフェラーリが参加しています。このスタイルは、あまり私の好みではありません。まあ、私の好みなんて、どうでもいいことではあるのですが。
残念ながら、衝突・火災など、事故の写真も多く含まれています。美しい車が無残な姿になっているのは、本当に残念です。
60年代後半から、ジェット戦闘機のコックピットのような感じの車室となって、これは私の好みです。私の好みなんて、どうでもいいことではあるのですが。
そして、お待ちかね、カラーページです。わーい、赤い跳ね馬がいっぱいいっぱい……と思ったら、黄色や銀や緑や青の跳ね馬もたくさん混じってました。
1984年、ポルシェが9回目のル・マン24時間優勝を達成し、フェラーリの記録に並びました。そのレースに参加したフェラーリは、たった一台。記録はリタイア(ギアボックストラブル)。ちょっと残念な“幕切れ”です。「ル・マンのフェラーリ」であり「フェラーリのル・マン」だった時代が終わったのです。
本書は、フェラーリファンにとっては垂涎の的かもしれません。もしファンでなくても、ページをめくると、頭の中にエキゾースト・ノートが鳴り響きますよ。