【ただいま読書中】

おかだ 外郎という乱読家です。mixiに書いている読書日記を、こちらにも出しています。

景気の管理

2013-03-14 18:57:43 | Weblog

 デフレをきちんとコントロールできない政府・日銀が、これから目指しているというインフレをきちんとコントロールできるのでしょうか? というか、政府や中央銀行が景気を完全にコントロールできたことって、これまでの歴史でどのくらいありました? 「神の見えざる手」って、政府・中央銀行のことでしたっけ?

【ただいま読書中】『数字の国のミステリー』マーカス・デュ・ソートイ 著、 冨永星 訳、 新潮社、2012年、2300円(税別)

 まずは素数から。昆虫の素数、音楽の素数、古代エジプトの数字の表記、古代バビロニア、マヤ文明、ヘブライ語……いやあ、著者の博覧強記には驚きます。「素数が無限に存在すること」は紀元前3世紀、エウクレイデス(ユークリッド)によって証明されましたが、とてもエレガントなやり方です。
 素数の章の最後に「100万ドルの懸賞問題」があります。「素数の分布にはばらつきがあるのか」という「リーマン予想」です。100万ドルは魅力ですが、世界中の数学者が頭を抱えている問題をそうそう簡単に素人が解けるわけがありません。本書では、5つの章それぞれに一つずつ「100万ドルの懸賞問題」が載せられていますから、別の問題にチャレンジすることにしましょう。
 2番目は幾何学。4次元とかフラクタルとかについていろいろ紹介されてから「この宇宙の形は?」という問題が提示されます。これはポアンカレ予想です。ただこの問題は2002年にペレルマンが解いてしまいました。ただしこの人、以前にフィールズ賞(数学界のノーベル賞と呼ばれる賞)を辞退したのと同様に、この問題の懸賞金も辞退しています。喜びは「金」ではなくて「問題を解くこと」にある人なのでしょうか。
 第3章は「ゲーム」ですが、のっけから「じゃんけんの世界大会(優勝者には賞金1万ドル)」の話題が登場して、私はふきだします。次の章は暗号。古典的な文字の置き換えからナチスドイツのエニグマ、信号塔に手旗信号。交響曲に隠された暗号。まあ話題がてんこ盛りです。話題がてんこ盛りなのは、この章に限った話ではないのですが。私が面白く感じたのは、本のISBNコードの話です。注文するときにうっかりタイプミスをしてしまったとき「それは入力ミスです」と親切にも指摘してくれるメカニズムはどうなっているか、なかなかよく考えてあるものだと感心します。
 最終章は「未来の予言」です。暦で日蝕や月蝕を予言するためにも数学が必要です。さらに、ポアンカレの“失敗”からカオス理論が生まれたことも紹介されます。
 本書は、数学のすぐれた入門書としても読めますが、私には著者の「数学への愛の告白」のようにも見えました。数学って、愛すべき対象でもあったんですね。