もう死語、というか、「そのもの」をあまり見なくなりました。私が子供の頃にはどの子も普通にはいていた(「鉄人28号」の金田正太郎がはいていたような)ショートパンツです。子育ての時期になって買おうとしたら店にあるのは「ハーフパンツ」ばかりで驚きましたっけ。懐かしの半ズボン、どこに行ってしまったんですか?
【ただいま読書中】『四次元半 襖の下張り(1)』石森章太郎 作、秋田書店、1979年(81年2刷)、290円
タイトルは明らかに『四畳半襖の下張り』のもじりです。ただし私が思うのは、永井荷風のものではなくて、春本の方。石森章太郎には、セックス用のアンドロイドが登場する「セクサロイド」や、体をサイボーグ化した女スパイがお色気たっぷりに活躍する「009ノ1」なんて作品がありますから、“そっち方面”を期待してしまうわけです。しかし気になるのはタイトルの「四次元半」の文字列。石森章太郎が「素直」に“そっち方面”に行ってくれるとは思えないんですよねえ。
石森章太郎の友人雨宮は、かつては石森と一緒に漫画家を目指していましたが、途中でイラストに転進し、そしてある日突然姿を消してしまいました。その雨宮から20年ぶりに不思議な手紙が届きます。そこに書かれた奇妙な指示に従う石森は、この世と異次元とをつなぐ霧に満ちた不思議な通路に出くわします。そこを抜けた人が目撃するのは……ある時は「雪国」、ある時は「失われた世界」、ある時は異星人に襲われた文明世界、あるいは「モロー博士の島」……
石森は雨宮の不思議な旅を追い求めます。そしてそれは同時に「石森章太郎の過去」を訪ねる旅でもあったのです。「次元を越えるトンネル」という、SFではありがちな“装置”を使い、数々の文学作品を“引用”しながら、しっかり「石森章太郎ワールド」を構築してみせるのは、さすがです。図書館に残りがあったら借りてこなくちゃ。