【ただいま読書中】

おかだ 外郎という乱読家です。mixiに書いている読書日記を、こちらにも出しています。

黒人の姿

2013-12-03 07:34:32 | Weblog

 私が子供の時「アメリカ大統領」「オリンピックの水泳選手」には黒人の姿が見られないのが普通でした。今はそうではなくなっています。すると次は、ヨーロッパの政治指導者や世界的なオーケストラの指揮者に続々と、の時代到来かな。

【ただいま読書中】『天狗騒動記』大佛次郎 著、 未知谷、2007年、3000円(税別)

 『鞍馬天狗』に続く長編第二作、だそうです。
 尊皇攘夷を旗印に「天狗党」が蜂起、筑波山に立てこもってあたりを荒らし回っていました。それを“後景"に、幕府の密偵もやっている妖艶な人妻、純情な若侍、天狗党の面々などの“活躍"を描く、痛快娯楽時代小説、のはずですが、なんだかずいぶん高踏路線に流れる傾向が見えて、読んでいて私はちょいとためらいます。単なる娯楽小説として読み捨てて良いのかな、と。
 勤王と佐幕、攘夷と開国、それに水戸藩の内紛が絡んで、天狗党の立場は微妙です。さらに天狗党の内部にも対立があります。そこに絡むのが、すれた年増の純愛模様。史実に残る天狗党の迷走や乱暴狼藉に合わせて、主要登場人物はあっちに行ったりこっちに来たり、こちらも迷走をつづけます。三角関係が四角になりまた三角になり……もう、焦れったいったら、ありません。
 天狗党は結局京都を目指して“長征"をすることになります。「大義」で始まった「義挙」も、最後は悲惨なことになってしまいます。幕末期といったらついつい「時代」というくくりで私は見てしまいますが、そこにも「個人の生活」があったことを著者は示してくれます。いくらなんでも波瀾万丈すぎるとは思いますけれどね。