俗物哲学者の独白

学校に一生引きこもることを避けるためにサラリーマンになった自称俗物哲学者の随筆。

猿マネ

2010-05-04 15:06:29 | Weblog
 プールで泳いでいて初心者に腹を立てることがある。
 大抵のことは「お互い様」だと思っている。人によって泳力が違うのだから、追い越し禁止のルールの元では、前が閊えたら自分がUターンをすれば済むことだと思う。
 しかしターンをしようとした時に初心者にスタートをされた場合だけはどうしようも無い。強引にターンをすればぶつかってしまうので立ち止まって休止せざるを得ない。
 なぜ彼らはこんなに行儀が悪く、他人の迷惑に鈍感なのか不思議だった。
 実は唯の猿マネだった。初心者がターンをしようとする時、上級者は初心者がターンをする直前まで待ってからスタートする。そうすれば上級者と初心者との間隔が最大になり、上級者も初心者も比較的長い間自分のペースで相互に邪魔をせずに泳げるからだ。上級者のそんな事情を理解せずに初心者が猿マネをするから周囲に迷惑を掛ける。
 上級者のやることの意味を考えずに初心者が猿マネをすれば確実に失敗する。イソップ寓話にはワシの真似をして羊を捕らえようとする愚かなカラスの話がある。
 気前の良い金持ちの真似をして金を浪費すれば破産する。プロの歌手が1/10音ほどわざと外すことを真似すれば半音ズレて音痴になる。イチロー選手の真似をして悪球に手を出せば打力が低下する。賢者の沈黙を真似れば意思が伝わらなくなる。
 優れた人を見習うことは悪いことではない。しかしその行為の理由を理解せずに猿マネをすれば恥を晒すことになる。

島国

2010-05-04 14:53:19 | Weblog
 島国であることは有難いことだ。
 江戸時代までに他国から侵略されたのは二度に亘る元寇だけしか無い。一方、海外派兵したのは白村江の戦いと秀吉による唐入り(朝鮮出兵)の2回のみ。常に他民族による侵略の危機に晒され続けたアジア・ヨーロッパの各国と比べて何と平和なことか。平和ボケして国防の必要性を忘れるのもやむを得ない。
 日本の国境は総て海上にある。そのお蔭で不法入国者を防ぐための国境警備兵もバリケードも必要無い。何と低コストなことか。
 疫病も簡単には入って来ない。空港と港で検疫体制を取れば大半が水際で食い止められる。隣国から空気感染する可能性も上流で河川が汚染されることも全く無い。何と安全なことか。
 こんな世にも稀な幸せな好立地で暮らしているのに何が不満なのだろう。指名手配犯でさえ貯金できるという豊かな国(2009年12月8日付け「失業」参照)で生きている日本人に今一番必要なことは「知足(足るを知ること)」ではないだろうか。

一夫一妻

2010-05-04 14:36:41 | Weblog
 一夫一妻制は民主主義や資本主義と同様、矛盾や不備がかなり多いにも関わらず、それに代わる制度が今のところ見当たらないために、世界中で広く採用されている。
 繁殖戦略において雄と雌の立場は対立する。
 人類の雌は一生で約400個の卵子しか作れない。しかも更年期までという時間的制約もある。従ってできるだけ質の良い子孫を残そうとして交尾する相手を厳選する。
 一方、人類の雄の精子は無尽蔵だ。かなり高齢になるまで幾らでも精子を放出できる。従ってできるだけ多数の雌と交尾をして多数の子孫を残そうとする。
 出産のための負担も不公平だ。雌は出産前後には不自由な生活を強いられ、時には命に関わることもある。一方、雄には何の負担も危険も無い。
 このように雌雄で利害が対立する場合、負担の重いほうの利益が優先される。従って婚姻制度は雌に有利な仕組みとせざるを得ない。雌の意向が善、雌とは相容れぬ雄の意向は悪とされる。それが一夫一妻制だ。
 この制度に従いたくない雄はどうするか。一夫多妻制のイスラム教の国へと移民しない限り、非婚を選ぶか結婚しても浮気をするかのどちらかを選ぶことになる。男が浮気をすることは倫理的な問題と言うよりは生物学的問題だ。一夫一妻制のシンボルとされるオシドリも実は毎年違った「つがい」になっているそうだ。