俗物哲学者の独白

学校に一生引きこもることを避けるためにサラリーマンになった自称俗物哲学者の随筆。

悪循環

2011-03-18 15:49:00 | Weblog
 今回の大震災の被災者数を見ると福島県の安否不明者数の多さが目立つ。18日付けの朝日新聞朝刊によると死者574人に対して安否不明者は3,507人だ。総数での死者5,694人、安否不明者19,607人と比べて明らかに歪だ。こうなった一因は原発事故にある。
 一部の地域には原発事故のせいで救援隊が立ち寄れない。本来なら救えた人が見殺しにされてしまった。これでは原発に殺されたようなものだ。
 15日には岩手県と宮城県からは震災発生後90時間以上経過してからの救出という嬉しいニュースが相次いで報じられた。福島県からは無い。
 支援物資のトラックも福島第一原発から30km以内には入れない。そのために原発からの避難者は他の避難者以上に不自由を強いられている。避難した入院患者の死亡も続出している。救援のボランティアも福島県を避ける人が少なくないそうだ。
 震災の報道は半分ほどが原発事故に割かれたために伝えられなかった情報は少なくなかろう。
 17日のヘリコプターによる投水や18日の消防車による放水ではパニック映画でのヒーローの登場のようにワクワクして映像を見つめた。しかしこの期待感は不安の裏返しでしかない。こんな事態を招いたことこそ問題だ。
 このように原発事故は直接被害以上に多くの間接被害を生んでいる。こんな悪循環の元となった原発を放置すれば同じような悲劇が繰り返されるだろう。

生兵法(2)

2011-03-18 15:33:35 | Weblog
 東京工業大学出身の菅首相は閣僚の中では多分最も良く原発を理解しているだろう。しかしそれが仇となった。
 原発は何重にも安全装置が施されている。従って簡単には重大な事故を招くことは無い。但し適正に運用されれば、だ。
 私のような部外者のド素人でも少なくとも3度は重大な人的ミスがあったと思う。給水ポンプの燃料切れの放置、鎮火の確認不足、そして冷却水量のチェック漏れだ。
 危険な原発には事故を防ぐための防災システムが完備されている。但しそれを運営するのは人間であり人間はミスを犯す。なまじっかシステムを理解していると人間によるミスの重大性を見落とす。
 航空機にせよ電車にせよ事故を防止するためのシステムを備えている。しかし機長がエンジンを逆噴射させたり運転手が非常識なスピードでカーブに突っ込むということは防げなかった。
 技術者は得てして技術を過信する。一方で現場では無茶苦茶な使い方が横行する。実務経験のある技術者ならシステムと現場とのギャップを知っている。しかし実務経験の無い菅首相はこのギャップを知らない。だから原発事故が拡大した。
 正しく運用されれば安全なシステムは、正しく運用されなければ危険なシステムとなる。理論を過信した思想家が現実離れするように、技術を過信した技術者も現実離れしてしまう。

初期対応

2011-03-18 15:18:18 | Weblog
 今頃になって菅首相は東京電力の対応のまずさにブチ切れしているが、当初から政府の危機感が欠けていたことこそ問題だ。
 事故に対しては悲観的に捕らえることが鉄則だ。最初から「チャイナ・シンドローム」を想定していればこんな惨めな事態にはならなかっただろう。
 事件や事故で大切なのは初期対応だ。初期に適切に対応していれば大半の惨事は防げる。ボヤの時点で適切に対処すれば簡単に鎮火できるがボヤの対処を誤れば大火災に至りかねない。
 今回の福島第一原発の事故が拡大したことは東京電力任せにした政府に大きな責任がある。当初から事態の重大性を認識していれば、決定権のある幹部に福島駐在を命じることもできた筈だ。
 はっきり言って東京電力はお役所体質の似非民間企業だ。天下りが横行する役人天国だ。現場での業務を下請け企業に丸投げしているから問題の所在さえ把握できないクズ企業だ。今日(18日)中に原発の電気施設を復旧させると発表したが本当だろうか。枝野官房長官でさえ信じていない。
 今回の事故は天災ではなく人災だ。ポンプの燃料切れの放置など明らかな人的ミスが多数ある。原発の構造上の不備以上に組織としての不備が目立つ。
 設備の不備だったのか組織の不備だったのかを明らかにするために裁判を通じて徹底的に検証すべきだろう。福島県民には東京電力を告訴する権利がある。