俗物哲学者の独白

学校に一生引きこもることを避けるためにサラリーマンになった自称俗物哲学者の随筆。

間接金融

2015-10-13 10:30:25 | Weblog
 企業への融資は直接金融と間接金融の2種類がある。社債や株式などを購入すれば直接金融で、預金されたお金が銀行などから融資されるのが間接金融だ。
 日本国民は多くの国債を持っている。直接金融はごく一部に過ぎず多くは間接金融だ。金融機関が預貯金の一部を使って国債を購入している。日本の国債残高が膨れ上がってもギリシャのような財政危機に陥らないのは、国民による間接金融が中心になっているからだ。預貯金が充分である限り国民による間接金融という構造は変わらない。国家財政を支えているのは豊かな国民だ。
 こう考えると一抹の不安を感じる。最多数者である団塊の世代が預貯金を取り崩し始めれば金融機関が国債を買うための資金が足りなくなって国債が暴落するのではないか、ということだ。
 そんな不安を持って調べてみたら、9月30日に日銀が家計金融資産の推移を発表していた。もしこれが中国政府の発表であれば絶対に信じないような驚くべきデータだった。何と家計金融資産は増え続けていた!
 データは2001年から15年までであり、その総額は01年の1,407兆円から15年の1,717兆円まで、08年と09年に一時減少したもののほぼ一貫して増え続けている。その内、現金・預金は01年の771兆円から15年の893兆円まで、04年から07年の減少以外はやはり増え続けている。この驚くべき事実をどう解釈したら良いのだろうか。
 これは高齢者がまだ資産の取り崩しを始めていないということだろう。定年後に削減された賃金と乏しい年金の範囲内で暮らしているからこそ家計金融資産が増え続けているとしか考えられない。
 こういう情報をマスコミは余り報じない。国の借金の増加ばかりを騒ぎ立てるから私もこのデータを知るまでは悲観的になっていた。この国の老人は意地汚くしかも逞しいようだ。マスコミが良いデータを無視して危機を煽ってばかりでは狼少年になってしまう。良いデータも悪いデータも対等に扱うべきであり朝日新聞の得意技の「角度を付ける」報道は公正とは言い難い。それは政府に批判的な人に迎合しているだけだ。
 7日の朝日新聞にはこんな記事があった。見出しは「法人所得 バブル期超え最高」だった。ところが記事を読めば「法人などが源泉徴収した所得税(中略)は、12.6%増の16兆6870億円で5年連続の増加。」と書かれていた。所得税が増え続けたのは給与が増えたということだろう。このことはついでに触れられただけだ。
 マスコミが幾ら批判をしても政府が国債残高を減らそうとしないのはちゃんとデータの裏付けがあっての政策だったようだ。

同化

2015-10-13 09:44:15 | Weblog
 明治維新以降、日本人は西洋人と同化することによって文明国の仲間入りをしようと努力をし、欧米以外では唯一の先進国となった。この成功体験があるから新たな領土である台湾や朝鮮や南太平洋諸島においても同じ政策を選んだ。
 欧米の軍事力は圧倒的に優れていた。日本人はペリーの来航以来それを痛感させられていたから近代化しなければ植民地にされ奴隷の地位に落とされると恐れた。だから新天地においても文明化は急務でありその地域独自の文化を否定せざるを得なかった。
 文化の多様性を認める現代の価値観に基づけばこれは誤った統治だ。それぞれの文化を尊重せねばならない。最悪なのは土着の言語まで失わせたスペイン・ポルトガルによる南米支配だ。しかし当時の世界観では文明国と未開地の差は歴然としていた。だから農業改革や教育の充実、あるいはインフラや衛生環境の整備、更には身分制度の廃止などを、たとえ住民の反対があっても強行せざるを得なかった。これらの施策を「過酷な植民地支配」と捕えるか文明化のために必要な措置と捕えるかは極めて主観的な価値判断になる。私は第二次世界大戦後の新しい価値観で過去を評価すべきではないと考える。
 現代においては民族自決が原則だ。それぞれの民族の独自性が肯定され余所者による文化の蹂躙は否定されている。しかし旧ユーゴスラビアのような他民族国家では激しい内乱の末、国は四分五裂した。アラブの春が招いたのは大混乱とIS(イスラミックステート)の台頭と大量の難民だ。先進国においてもイギリスやスペインやカナダなどでは分離独立運動が起こっている。
 中国のウィグルやチベットをこれらと同列に扱うべきではなかろうが、漢族による同化策に無理があることは明らかだ。中国の歴代の王朝の多くが農民と新興宗教集団の反乱によって滅んだ。歴史に学ぶ民族でありしかも宗教を否定する共産党の一党独裁体制なのだから、イスラム教や仏教との妥協はあり得ない。漢族による文化の破壊と同化を否定するなら分離独立以外に解決策はあり得ない。
 韓国が奇妙な動きを見せている。アメリカによる庇護を否定して中国に急接近する二股外交を試みつつある。北朝鮮に影響力を持つ中国に頼ることは理解できるが、ウィグル族やチベット族に対する植民地支配をどう評価しているのだろうか。二股外交だけではなく二枚舌外交なのではないだろうか。