俗物哲学者の独白

学校に一生引きこもることを避けるためにサラリーマンになった自称俗物哲学者の随筆。

席取り

2016-02-09 10:26:17 | Weblog
 セルフサービスの食堂では、先に席を押さえてから料理を買いに行く人が少なくない。私の元勤務先の社員食堂はこれを禁止していた。先に席を押さえれば座席の回転率が下がるからだ。席を押さえてから料理を買いに行けばその間、その席は無人の席になるから回転率が下がるし料理を抱えたまま立ち往生する人も増える。しかしこのルールは空文化していた。グループ行動をしたがる女性社員が必ずまとまった席を押さえていたからだ。そんな女性グループを敢えて咎めようとする人はいなかった。
 こんな例は少なくない。温泉などの公衆浴場では風呂桶やタオルなどによって洗い場を先に押さえる人がいる。あるいはプールの更衣室の洗面所にパンツやタオルなどを置いて他人を排斥しようとする人がいる。こんな権利など認めるべきとは思えないが、こんな下らないことで喧嘩になってもつまらないだけだから黙認されている。日本人の多くは寛大で優しい。だから無法者が付け上がる。
 こんな人が外国へ行くと思い掛けない目に遭う。フードコートなどでテーブルにバッグなどを置いても無視して占領される。日本人以外にこんなルールは通用しない。セルフサービスのテーブルは準備ができた人から順番に使うことが常識だ。レストランとは違う。
 それで済めばまだマシだ。万引に遭うこともある。バッグなどを放置すれば「盗ってくれ」と言っているようなものだ。こんな日本人のグループを専門に狙う万引犯さえいるようだ。
 優しい日本人に囲まれていると自分がどれほど厚遇されているかに気付かない。知らず知らずのうちに傍若無人な振舞いをしていることが少なくない。寛大な人々に囲まれていると自分が我儘であることに気付かない。甘やかされた駄々っ子のようなものだ。海外に旅行をすれば日本での常識がいかに非常識であるかに気付かされることが多い。これは中国人観光客と同じことだ。海外旅行で憤る人の多くは国内で傍若無人な振舞いをしている人だろう。権利意識の高い西洋人は他者の我儘を許さない。人の好意は受け入れるべきだがそれを好意と理解しなければ恥知らずになる。

先天性と後天性

2016-02-09 09:48:35 | Weblog
 能力とは先天性×後天性だと私は考えている。猿にどれほど高度な教育をしても人間にはなれないし、完全に育児放棄をされた人は獣以下の動物になる。どちらが不充分であっても不充分な能力しか獲得できない。
 日本人は先天性の差を認めたがらない。生まれた時は皆同じであって、育児と教育によってその差が生まれると考える人が少なくない。実際には生まれた時点で既に潜在的には大きな差があるのに、スタート時点では平等だと考えたがる。
 そう考える親は残酷だ。他人に負けるのは努力が足りないからと決め付けて子供を咎める。責任の半分は自分が受け継がせた先天性であることを認めようとはしない。
 先天性は変えられない。そのまま肯定するしか無い。先天的な特徴を長所・短所としてではなく個性と認めるべきだろう。個性に合わせて教育は行われるべきだろう。特に優れた点があれば英才教育があっても良かろう。してはならないことは妙な型に嵌めることだ。型に嵌められれば歪んだ形で成長する。
 自然は肯定されねばならない。自然法則に基づいて人工物は作られるべきであり自然を否定すれば自然によって逆襲される。もし引力の法則に逆らった建物を作れば忽ち破壊される。
 私が医療を批判するのは、それが自然治癒力を軽視するからだ。せっかく自然治癒力が働いて健康を取り戻そうとしている時に、人間の浅知恵が妨害する。あるいは自然治癒力の手柄を横取りする。長い間、傷口は消毒されていたが、こんな妨害にも拘わらず自然治癒力は黙々と役割を果たし続けた。
 医療が前提とすべきことは自然治癒力の肯定だ。高血圧症や鬱病に罹るのは何か訳があってのことと疑うべきだ。それが必要性に基づくか機能の狂いに基づくかを識別せねばならない。必要性に基づく反応であるなら薬によって抑え込むことは却って有害だ。
 確かに自然治癒力が誤ることはある。しかしそれはむしろレアケースだろう。自然治癒力に弱点や欠点があることは事実だ。アレルギー反応は免疫力の暴走であり、癌などの腫瘍が成長するのは免疫力が異物と認識したものしか攻撃しないからだ。まず自然治癒力を肯定した上で、その弱点・欠点を補完することが医療の最も重要な役割だろう。
 これは全くの素人考えだが、免疫力が癌細胞を異物と認識しないのであれば、遺伝子操作によって癌細胞を異物のレベルにまで変異させてしまうという対策は無いものだろうか。有害性が高まる可能性もあるが、免疫力の力を借りられるというメリットのほうが大きいのではないだろうか。