文在寅大統領と金正恩国務委員長の「9月平壌共同宣言」3周年(9月19日)と南北国連同時・分離加入30周年(9月17日)を目前にした朝鮮半島に張り詰めた空気が漂っている。

2021-09-17 13:18:17 | 朝鮮を知ろう。

[ニュース分析]南北、武力競争の中で「暗中模索」

登録:2021-09-17 06:09 修正:2021-09-17 11:26
 
韓国政府、潜水艦弾道ミサイル発射実験の翌日に 
「対話と協力の努力を続ける」意志示す 
 
キム・ヨジョン副部長も「南北関係の完全破壊」言及後 
「僕たちはそれを望まない」 と発言のレベルを調整 
南側を批判する談話、労働新聞には掲載せず
 
 
「労働新聞」は「鉄道機動ミサイル連隊は9月15日未明、中部山岳地帯で機動し、800キロのメートル界線の標的地域を攻撃する任務を受けて訓練に参加」し、「朝鮮東海上800キロメートルの水域に設定された標的を正確に攻撃した」と1面に報じた。北朝鮮版イスカンデルの改良型と推定される短距離弾道ミサイルが、火炎を噴出しながら列車から発射されている/朝鮮中央通信・聯合ニュース

南北関係が危険水域に近づいている。南北は同じ日(15日)にサイルを発射し、武力を誇示した。南側は潜水艦から弾道ミサイルを、北側は汽車から弾道ミサイルを発射した。南側は「北朝鮮の挑発に対する確実な抑止力」とし、北側は「脅威勢力に対する同時多発的な集中攻撃能力を高めるため」という理由を挙げた。自衛のための武装力の強化が相手の恐怖を刺激し、軍事的対抗につながる「安全保障のジレンマ」という悪循環が目の前にちらつく。文在寅(ムン・ジェイン)大統領と金正恩(キム・ジョンウン)国務委員長の「9月平壌共同宣言」3周年(9月19日)と南北国連同時・分離加入30周年(9月17日)を目前にした朝鮮半島に張り詰めた空気が漂っている。

 しかし南北は「ミサイル武力誇示」を対立と衝突の火付け役とするよりは、ひとまず息を整え、次に向けた可能性を残した。統一部は16日「朝鮮半島の非核化と平和定着、南北関係を進展させる最も良い道は対話と協力」だとし、「南北の対話と協力を早期に再開するための努力を続ける」という「政府の立場」を示した。キム・ヨジョン朝鮮労働党中央委副部長は前日深夜に発表した談話で、「北南関係の完全破壊」などで脅して見せたが、すぐさま「我々はそれを望まない」と一歩引いた。金正恩(キム・ジョンウン)総書記はミサイル発射現場に姿を現さず、距離を置いた。南北いずれも「南北関係は終わり!」と宣言することなく、「別の道」を向かう暗中模索を続けていく考えを示したわけだ。

 15、16日の2日間、南北から発せられたシグナルは、鋭くて複雑だった。文在寅大統領は15日、国防科学研究所安興(アンフン)総合実験場で、潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)の潜水艦発射の発射実験を現場で見守った。その場で文大統領は「北朝鮮の挑発」を3回も言及した。国家安全保障会議(NSC)常任委員会も「北朝鮮の連続したミサイル発射挑発」に「深い憂慮」を表明すると述べた。NSCが発表資料で「北朝鮮の挑発」に言及したのは今年に入って初めてで、文大統領がその場で3回も「北朝鮮の挑発」を口にしたことも前例がない。高度の政務的判断に基づき、「北朝鮮の挑発」という異例の表現を公の場で使ったことをうかがわせる。

 これに関し文大統領は「今日(15日)、われわれのミサイル戦力発射実験は北朝鮮の挑発に対応したものではなく、われわれ自身のミサイル戦力増強計画によって予定された日に行われたもの」だと強調した。核・大陸間弾道ミサイル(ICBM)を前面に押し出した北朝鮮の軍事力増強を不安に思う国民に対北朝鮮牽制能力が十分であることを強調し、説得するための国内政治用の行動であって、「北朝鮮に向けた武力誇示」ではないという話に聞こえる。

 
 
韓国が独自開発した潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)が今月15日、島山安昌浩艦(3000トン級)に搭載され、水中から発射されている=国防部提供//ハンギョレ新聞社

  キム・ヨジョン副部長も11、12日の巡航ミサイル発射と15日の弾道ミサイルの発射が「誰かを狙い、時期を選んで『挑発』するものではない」と明らかにした。「(今年1月の第8回)党大会決定貫徹のための国防科学発展および兵器体系開発5ヵ年計画の初年度重点課題遂行」のための「正常的・自衛的活動」で、「南朝鮮の『国防中期計画』のようなもの」ということだ。 朝鮮半島情勢を揺さぶる目的の「軍事行動」ではないと説明している。さらに文大統領の「挑発」発言を狙って「不適切な失言」だとし、「非常に大きな遺憾を表明する」と述べた。

 16日付の「労働新聞」は前日の弾道ミサイル発射は「パク・ジョンチョン同志(党書記)が鉄道機動ミサイル連帯の検閲射撃訓練を指導」したものだと報じた。一方、「北南関係の破壊」に言及したキム・ヨジョン副部長の深夜談話は、北朝鮮の一般人民が接する同日の労働新聞には掲載されなかった。一般の人民が接することのできない対外向け「朝鮮中央通信」を通じて発表された。キム副部長が初めて文大統領の実名を挙げて批判した談話内容を人民には知らせなかったのだ。北側最高指導部の「状況管理」と見られる部分だ。

 北朝鮮事情に詳しい元政府高官は「キム副部長の談話は前より(悪口や皮肉がなく)相対的に純化された語法を駆使したのが目を引く」とし、「北側が現在の南北関係をあまり悪く見ていない印象を受けた」と述べた。ただ、同元高官は「朝米関係に進展がなければ、北側の低いレベルの軍事行動はこれからも続く可能性が高い」と付け加えた。別の外交安保分野の元高官は「朝米対話が行われるまでは、北朝鮮が緊張・危機感を高める(軍事)行動のレベルを、緩やかながらも持続的に高める可能性がある」と見通した。

イ・ジェフン先任記者(お問い合わせ japan@hani.co.kr)

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