「容疑者Xの献身」を読んだ。ドラマで福山雅治が演じた物理学者・湯川のガリレオシリーズである。東野さんの小説を読むのはこれが初めてだ。どれにしようかと迷っていたところ、この本がアマゾンのカスタマーレビューで圧倒的な件数だったので、これにした。
こういうタイプの小説はあまり読まないのだけど、それでも、面白かった。このタイプの小説は内容を言うとネタバレしてしまい、おもしろくなくなるので、控えておいたほうがいいだろう。だから、小説の形式的なことで、感じたことを書こうと思う。
まず、読み始めて感じたことは、一文が短いということだ。文章がシンプルである。だから読みやすい。不要な修飾語もほとんどない。いい勉強になる。
それから、私の想像では、物理学者の湯川が複雑な物事を推理していく物語なのだから、湯川の視点で文章が構成されていると思いきや、意外なことに鳥瞰的な三人称になっていた。物語の構成は、刑事コロンボや古畑任三郎のように犯人は既に分かっているのだが、どのように犯行だ行われたのかを事後的に暴くというものである。ただ、この物語に関しては、主人公が誰かは、はっきりいえない。それぞれが重要なキャラだからだ。そのような話の場合、三人称が書きやすいのかなぁと思ったりもした。
一人称だと、他の登場人物の考えていることを、主人公の視点を通してしか見ることができない。物語の世界は、主人公の頭の中にあるからだ。そうすると、どうしても物語の構成が単純になってしまう。ただ、一人称の利点は、主人公の思考過程を理解しやすいこと、また主人公が好きなら感情移入しやすいということである。
自分が書く側なら、どこに視点を置くかは重要な事ではあるが、読む側ならよく書けているなら何でもいいと思う。
まぁ、よく読まれている小説にはそれなりの理由があると思った。おもしろかった。