貴志祐介の「天使の囀り(さえずり)」を読了。
これで貴志氏の小説を三冊読んだことになる。その中で、この本が一番面白かった。
ただ、どう面白かったかを説明するのは難しい。なぜなら、それを言っちゃうとネタバレしてしまうからである。
一応、ジャンルは、ホラーということになっている。しかし、私はミステリーだと思っている。謎を知りたいとおもい、夢中になってページをくくっていたから。
気持ちの悪い寄生虫のような虫(線虫)が出てくるが、そういう生物が嫌いな人にとってはホラーなのかもしれない。そういう虫的なものが本当に嫌いな人は読まないほうがいい。
しかし、恐怖は、実は快楽とちかいところにある。それがこの小説のひとつのテーマでもある。だから、怖い怖いと思いながら、人間はそれに近づいてしまう。
怖いといって目をそむけるより、こわごわ見てみるのも、実は楽しい。
それから、このような科学的なテーマを扱った小説はいつ書かれたかが、意外と重要である。古い小説は、今の進歩と食い違ってくるからである。
この小説の初版発行は1998年になっている。だから、この小説が書かれたのは、だいたい15年前くらいである。それにも少しびっくりする。今読んでもまったく古くないのだ。
脳神経学や生物学などよく勉強していて、今読んでも新鮮である。当時、これだけのことが書けたことがすごい。私も生物的なことは興味があって、よく知っている方であるが、それでも知らないことがほとんどだった。
もし、時間つぶしのために何を読もうか迷っている人、自信をもってお薦めする。