安倍総理が経済政策の一環として、農業・農村の所得を倍増する目標を掲げた。これについては「補助金行政の復活だ」などの批判もある。
しかし、私は世界の人口増加がいまだ続いている現在、食料とエネルギーをどのように確保するのかが、政治家の大きな課題だと考えている。したがって、この政策は必ずしも間違いではない。
ただ、問題は方法論である。日本はイメージとは逆に農作物に農薬と肥料がたくさん使われている。農薬をたくさん使えば健康的にも問題があるし、肥料を多く使えばコストがかかる。
日本人は野菜の形状について、潔癖症すぎるのではないだろうか。少しくらい虫に食われていても問題はない。無農薬でかつ虫がつかないようにするには、遺伝子組み換えの種を使うしかない。
私たちが手本とすべきは、イスラエルの農業である。イスラエルの国土面積は世界第152位で狭い。22072平方キロメートルである(ちなみに日本は377930平方キロメートルで62位)。そしてその60%が砂漠である。
このような過酷な条件で、補助金なしで利益を出せる世界トップの農業生産国となった。食料自給率は93%以上である。水と豊かな土壌に恵まれた日本より圧倒的に効率がいい。
なぜこのようなことが可能だったのだろうか。それは農業にITを取り入れ、少ない水を効率よく使った結果である。
これは日本の省エネ技術と通じるところがある。少ないから大切に使うのである。
地球はひとつしかないから、物質的資源には限界がある。中国人ひとりひとりを日本人とおなじ生活レベルにするには、地球三つ必要である。だから、現実に人口が増加する世界で経済成長するためには、1%の人間に富を集中させ格差を拡大するしかない。このような物質的な限界が存在する以上、全員が仲良く手をつないで裕福になることはできない。
人類が戦争をしないで生き延びるためには、エネルギーに関する技術革新と農業の徹底した効率化が求められる。
私はエネルギー革命については、日本で起きる可能性が高いと思っている。日本はエネルギーに関する危機意識が高いからである。しかし、農業に関しては、今の飽食状態では難しいだろう。だから、素直に他国から学ぶべきである。