東京は昨日から雨が降っていて山に行けないので、家に閉じこもって読書三昧。
3・11だし、出かけるのもね。
ということで、昨日、図書館から大量に本を借りてきてそれを読んでいる。
「悪童日記」読了。
第2次世界大戦下のヨーロッパでのお話。
著者は意図的に場所を明示するのを避けている。ただ、著者がハンガリーとオーストリアの国境付近の村で生まれていることから、その辺ではないかと推測できる。
主人公は双子の男の子である。一般的には、クソガキといっていいだろう。
ただ、悪童かもしれないが、悪党ではない。むしろ、彼らは人の心を内側から温めるようなやさしさを持っている。そして、強い。
日本でも、戦後の混乱期にこのような少年たちがたくさんいたのではないかと思う。
少年たちは賢くクールである。学び、鍛錬し、労働する。
学ぶことと戦うことがリンクしている。
生き延び、戦うために、学んでいる。本来、学びとはこういうものである。
第二次世界大戦下ヨーロッパは、どの国も暗く悲惨である。この本に出てくるエピソードも、悲惨で気分が悪くなくことが多い。
しかし、この暗い感じとは裏腹に、読み終わった後、清々しい気持ちになる。人生を祝福し肯定したいと思ってしまう。
何故なんだろうか。
それは、彼ら自身が人生を肯定しているからである。
何故、彼らは人生を肯定できるのか。
それは、少年たちが、愛すること、愛されることを知っているからだと思う。
ちょっと、本の中の一節を引用しよう。
おばあちゃんは、ぼくらをこう呼ぶ。
「牝犬の子」
人々は、ぼくらをこう呼ぶ。
「魔女の子、淫売の子」
また、別の人々は、こんな言葉を叩きつけて来る。
「バカモノ、与太者、鼻くそ小僧、アホ、豚っ子、道楽者、ヤクザ、ゴロツキ、クソったれ、極悪人、殺人鬼の卵」
これらの言葉を聞くと、ぼくらは顔が赤くなり、耳鳴りがし、目がチクチクし、膝がガクガクと震える。
(中略)
しかし、以前に聞いて、記憶に残っている言葉もある。
お母さんは、ぼくらにこう言ったものだ。
「私の愛しい子、最愛の子、私の秘蔵っ子、私の大切なかわいい赤ちゃん」
これらの言葉を思い出すと、ぼくらの目に涙があふれる。
これらの言葉を、ぼくらは忘れなくてはならない。というのは、今では誰一人、ぼくらにこの類の言葉をかけてくれないし、それに、それらの言葉の思い出は切なすぎて、この先、とうてい胸に秘めていけないからだ。
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