あたりは月明かりに照らされ、暗闇というより薄墨色だ。
冷たい冬風が頬に吹き付け、一瞬、体が寒さで強ばる。
しかし、おそれることはない。ゆっくりと五分ほど走れば、体は温まり、寒さが心地よくなってくる。
肩を軽く回し、首をグイグイっとひねる。そして小さい歩幅でゆっくりと走り始める。
大事なのはリズムだ。リズムだけ守って走れば、気持ちがどんどん乗ってくる。
いつだってスイッチさえ入れれば、体は気持ちよく動いてくれる。一番難しいのは、その気持ちのスイッチを入れることだ。
スイッチを入れやすいように、まずは小さく始めよう。
そして、小刻みなリズムをつくる。
そのリズムを守れば、そのうち大きなうねりがやってくる。