いろいろやることがあって、ブログが書けなかった。また、今日から再開する。
ちょっと前に話題になっていた本、「僕は君たちに武器を配りたい」を読了。
著者の瀧本哲史氏は京大で一番人気のある教官で、類書に「武器としての決断思考」という本がある。
この本は、基本的に20代の若者、特に就職活動をしようとしている学生に向けられた本である。
しかし、誰が読んでも役に立つ。
なぜなら、この本の目的は学生に有利な就活方法を教えることではなく、若者に資本主義の本質を理解させることにあり、すべての人は、資本主義社会の中で生きているからである。
本の表紙にはこう書いてある。
「本書は、これから社会に旅立つ、あるいは旅立ったばかりの若者が、非情で残酷な日本社会を生き抜くためのゲリラ戦のすすめである。2011年現在、日本の経済は冷えきっており、そこから回復するきざしはどこにも見えない。求人状況も最悪だ。リーマン・ショック以降、日本の大手企業は求人数を大幅にしぼり、有効求人倍率は0.5倍前後を推移している。これは職を求める人に対して、半分ほどしか仕事の口がないことを意味する」
いい企業に就職し安定を勝ち取ることではなく(もうそのような安定はない)、資本主義の荒波を生き抜くゲリラ戦で、どう戦うべきかの武器(知恵)を与えようとしているわけである。
刺激的な内容である。
具体的に、面白かったところを紹介する。
資本主義はコモディティ化をどんどん進める。コモディティ化とは、市場に出回っている商品が、個性を失ってしまい、消費者にとってみればどのメーカーのどの商品を買っても大差がない状態である。違いは、単に値段の安さということになる。だから、安売り競争になる。
商品だけではなく、人もどんどんコモディティ化が進んでいる。それは、弁護士、会計士、TOECの点数などの資格など、従来、取得が難しいとされていた資格ですらそうである。
だから、自分がコモディティにならないようにすることが重要になる。コモディティになれば、どんどん買い叩かれて、賃金が安くなる。
だから、唯一無二のスペシャリストにならなければならない。その者だけが生き残れる。
資本主義で儲けられる人、カモにされる人
カモにされるのは、自分で何も考えないで、ただ人に使われているだけの人である。それは、高学歴、弁護士や会計士、高い資格を有している人であっても例外ではない。
彼らは単なる労働力を提供するだけのコモディティであり、かわりはいくらでもいるからである。
儲けられる人
1 商品を遠くに運んで売ることができる人(トレーダー)。単に物を右から左に流す人である。
2 自分の専門性を高めて、高いスキルによって仕事をする人(エキスパート)
3 商品に付加価値を付けて、市場にあわせて売ることが出来る人(マーケター)
4 まったく新しい仕組みをイノベーション出来る人(イノベーター)
5 自分が起業家となり、みんなをマネージ(管理)してリーダーとして行動する人(リーダー)
6 投資家として市場に参加している人(インベスター)
だが、1のトレーダーと2のエキスパートは、今後生き残っていくのは難しくなる。
トレーダーは、ネットの普及により個人が中間を飛ばして売買しやすくなったからである。
また、エキスパートは、時代が変化しその専門性が必要とされなくなったらそれで終わりだからである。この激動の時代、10年後、その専門性が役に立っているのかどうか分からない。
著者はいう。
「人生は短い。愚痴をこぼして社長や上司の悪口を言う暇があるのなら、他にもっと生産性の高いことがあるはずだ。もし、それがないのであれば、そういう自分の人生を見直すために自分の時間を使うべきだ」と。
本当にそう思う。しかし、会社の悪口を言って憂さ晴らしをする人は、今後もいなくならないだろう。自分で考えなくていいし、そのほうが楽だからである。
じゃあ、君はどうするのだ、と問いかけるのが、この本である。
資本主義のなかでサバイブするために、価値のある一冊だと思う。