映画だけど、ノリはテレビシリーズのそれだ。
特撮予算が削減されたとかで劇場用にしては特撮シーンやセットがしょぼかったりするシーンがあるから物足りなさを感じる人がいるかもしれないけど、ファンとしてはテレビシリーズのような雰囲気がとてもよかった。
テレビシリーズのノリと映画のスペクタクルな雰囲気や盛り上がりを両立させるのは案外むずかしいかもしれない。劇場版としてはじゅうぶんに楽しめたけど、「スタートレック」としてはどうなんだろうと思う作品がなかにはあったりする。トレッキーは熱烈なスタートレックファンだけど、思い入れがたっぷりあるぶん、なにかとうるさいから映画を製作するほうもたいへんかもしれない。欲を言えば、ラストのほうでストーリーにもう一捻りほしかったところではあるけど。
この作品のいちばんいいところはカーク船長、ミスター・スポック、ドクター・マッコイの友情をしっかり描いているところだ。
スポックのとぼけたユーモア、マッコイの毒舌がよく効いている。
スタートレックはSF的なアイデアやスタートレック精神とでもいうべき思想もだいじだけど、なにより主役の三人の人間関係をうまく描けているかどうかがポイントだ。三人の関係がうまく描けているからこそ、ストーリーが活きてくる。逆に言えば、この三人のヒューマンドラマが生きいきとしていなければ、どんなにひねりの効いたストーリーもSF的なアイデアも、スタートレックらしさを失ってしまう。それではつまらない。スタートレックは、SFというよりもヒューマンドラマが本質の作品だと思う。
それにしても気になるのは、描かれなかったカーク船長のトラウマだ。カーク船長の心を悩ましているものは、いったいなんなのだろう?