風になりたい

自作の小説とエッセイをアップしています。テーマは「個人」としてどう生きるか。純文学風の作品が好みです。

愛び

2022年01月18日 05時15分15秒 | 詩集
 竹の葉がさざめく
 季節の花が咲いた裏庭
 夕陽があなたの頰を染める
 風の声になんとなく
 耳を傾けるふたり

 ふと触れ合った指先
 うつむいたあなた
 交わす言葉にうなずきあう
 結ばれたなら
 ほかにはなにもいらない

 愛うつくしび
 ここであなたを待っていた
 ずっとあなたを待っていた


 清らな瀬の音
 とまらない川の流れ
 ふたりの鼓動を
 たかぶらせては鎮しずめめ
 鎮めてはたかぶらせ

 月の光の匂いは
 あなたの香りに似ている
 長い黒髪に光が跳ねて
 心のしずくになる
 せつない吐息

 愛うつくしび
 ここであなたを呼んでいた
 ずっとあなたを呼んでいた

北星

2022年01月05日 20時03分40秒 | 詩集

 灯りの消えた寝台車の通路
 折り畳みの椅子に腰掛けて
 夜の車窓を眺めた
 雪をかぶった暗い田んぼ
 雨戸を閉めた家
 車輪が雪煙を巻き上げる

 窓に映った僕の顔
 歪んだ僕の顔
 君の笑顔を破ったのは
 この僕だ
 君が悪いわけじゃない

  北の空に
  ひときわ明るく輝く星よ
  消えそうな僕の後悔を
  なにも言わずに預かっておくれ


 轍が続く雪の道
 不意に現れては流れる踏切
 警告音が胸に突き刺さる
 僕が逃げただけのこと
 僕が弱いだけのこと
 君が悪いわけじゃない

  北の空に
  ひときわ明るく輝く星よ
  あの女ひとの凍える悲しみを
  なにも言わずに預かっておくれ

雪のプラットホーム

2022年01月03日 06時10分20秒 | 詩集
 
 さよならを言った
 雪のプラットホーム
 誰もいない木造駅舎
 君の頰は林檎の色

 雪をまとった裸木
 銀色に染まった山並み
 吹きつける粉雪が
 君の髪を凍らせる

 僕のための
 涙はいらない
 君のためだけに
 泣けばいい

 汽笛が鳴る
 恋が終わる
 もう逢えない
 夢のなかでさえ

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