風になりたい

自作の小説とエッセイをアップしています。テーマは「個人」としてどう生きるか。純文学風の作品が好みです。

愛の廃墟

2025年01月11日 12時16分45秒 | 詩集

しあわせになれなかった
 ぼくの生まれた家族
 どこにでもある平凡な家庭
 世界にあふれてる
 まぶしい光に背を向けて
 愛を踏みにじる
 痛々しい日々

 嫌悪のまなざし
 傷つけるだけの言葉
 心の底が抜けてしまったような
 やるせない絶望
 堕天使に愛を売り渡し
 恨みつらみばかりをつのらせて


  誰の心にも
  神殿がある
  それは心の奥の聖なる宮
  愛や優しさや希望が宿るところ
  夢や善や美しさが生まれるところ

  心の神殿を
  打ち毀こわしてしまえば
  人はまともに生きていけなくなる
  腐った愛の臭いを嗅ぎつけた悪霊が
  廃墟の心に棲みついてしまう


 憎しみに目がくらみ
 愛を裏切ったことに
 気づかないでいた
 胸の痛みは死ぬまで続く
 それが十字架なら
 背負って生きるしかなくて

 しあわせになれなかった
 ぼくの生まれた家族
 ゆがんだ感情のはけ口を求めて
 狂ったように傷つけあった
 しあわせを誓ったはずだったのに
 しあわせになりたかったはずなのに
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見えない道をたどりながら

2024年07月09日 00時18分22秒 | 詩集

 ポケットから
 りんごを出してかじってみた
 誰もいない河原
 ひんやりと風が吹く
 川向こうにそびえる塔
 残りわずかな夕陽を照り返して

 光を失った川は
 滔々と
 黒々と
 急ぐわけでもなく流れる
 青鷺あおさぎは
 浅瀬の窪みに脚を入れたまま
 背筋を伸ばしてじっとたたずむ

  手に入れた夢の数を
  指折り数え
  失った愛の数を
  指折り数えてみる
  人生は
  思いがけないことばかり
  自分の意思で
  歩いているつもりだけど
  ほんとうのところは
  なにかに導かれて
  目に見えない道を
  歩いているのだろう

  この先どこまで行けるのか
  とにかく行けるところまで
  行ってみよう
  つまずきながらでも
  歩けるところまで
  歩いてみようと思う
  進んでさえいれば
  どこかへたどり着くはずだから

 青鷺が飛び立つ
 紅く熟れた残照が消え
 夜の匂いが風にまじる
 言葉にならない言葉が
 心のうちに湧き上がるから
 想いにならない想いが
 身体を突き上げるから
 かじりかけのりんごを
 力一杯
 放り投げた
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君だって飛べるのさ

2024年06月19日 20時39分42秒 | 詩集

 つばさをつければ
 だれでも天使になれるのさ
 とっておきのつばさを
 君にあげる


 むずかしいことなんて
 なんにもない
 そっと目を閉じて
 飛びたいって思えば
 自然と羽ばたくから

 ほらね
 君だって飛べただろう
 誰だって飛べるんだよ
 飛びたいって思えば
 すぐに飛べるのさ

 天使の仕事は
 愛を運ぶこと
 世界中で
 いちばん素敵な仕事だよ
 愛があれば
 倖せになれるから
 愛でしか
 人は自由になれないから

  愛が広がりますように
  もっともっと
  愛で満ちますように
  たとえようもない悲しみが
  癒されますように


 とっておきの夢を
 君にあげる
 つばさをつければ
 だれでも天使になれるのさ
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静かな夜に汽笛が鳴る

2024年06月02日 18時07分06秒 | 詩集

 こころのなかを
 夜汽車が走る
 透明な悲しみを
 ふりまきながら
 汽笛を鳴らす
 夜汽車が走る

 星空の丘を
 夜汽車が走る
 愛してくれた人の
 面影を残して
 線路が軋む
 夜汽車が走る

  消えそうな想いを
  抱きしめて
  消えてしまわないように
  あたためて
  あなたの思い出があれば
  生きていけるから

  いつか再び
  見える日がくれば
  話せなかったことを
  話したい
  暖炉であたたまりながら
  こころゆくまで
  語らいたい

 こころのなかを
 夜汽車が走る
 夜明けを目指して
 夜汽車が走る
 汽笛を鳴らす
 月が揺れる
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ぶどう畑の約束

2024年04月01日 18時53分15秒 | 詩集

 夕暮れの丘
 ぶどう畑
 紅く染まった
 たわわな果実

 やっと見つけた
 しあわせの影
 あなたとふたり
 ふたりでひとつ

 生まれる前に
 約束していた
 必ずあなたを
 探し出すからと

  ずいぶんと
  回り道をしてしまったけど
  ずいぶんと
  待たせてしまったけど

 ぶどうの房を
 籠へ入れる
 なぜかこころが
 弾み出す

 今夜は
 一粒ひと粒味わいながら
 こころゆくまで
 おしゃべりしたい

  夢や
  愛や
  希望を
  あなたと語り合いたい
  あなただけと語りたい

 夕暮れの丘
 ぶどう畑
 紅く染まった
 たわわなしあわせ
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君が好き

2024年03月19日 22時37分28秒 | 詩集

花のように笑う君が好き
夢を語る君が好き


自分の人生にいいことなんて
もう起きないと思い込んでいた
君に出逢わなかったら
僕は死んでいた

未来はないけど希望はある
君が信じている
神さまが手配してくださった出会いだから
一日いちにちを大切にしたい

君と歩く道は
僕たちだけの道
波が岩に砕けるように
つらい日々があるかもしれないけど
希望を信じて歩きたい

僕なりにがんばるからさ
二人で歩いた人生を
きっと後悔はさせない
後悔はしない


花のように笑う君が好き
真実の愛を語る君が好き

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波止場で終わる恋

2024年03月03日 23時49分53秒 | 詩集

 冬の晴れた空
 穏やかな入江
 波と戯れる海鳥たち
 なにもかもが
 いい夢だったから
 ここでお別れしましょう

 海を見つめるあなた
 高い鼻とあごのラインが好き
 いけないとわかっていながら
 なにげなく育てた恋

 あなたと一緒にしあわせを
 探しにゆけたらいいのに
 とても許されないことだから
 想いは波間に揺れる

 あなたが教えてくれたこと
 愛はいつでもやさしい
 わたしたちの思い出があれば
 これからも生きてゆけそう

  ためらいは罪
  人は前へしか進めない
  あなたの未来を
  縛ることなんてできないから

 高く澄んだ空
 たなびく薄雲
 遠くで汽笛が響く
 冷たい風が
 ふたりを吹き抜ける
 その前にお別れしましょう
 今ここでお別れしましょう
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雪と湯の花と君と

2024年02月25日 19時30分05秒 | 詩集

 ホームへ降りたら
 湯の花の香り
 君は白い息を吐き
 静かに降りしきる
 雪を見上げる

 人影もまばらな温泉町
 純白に埋もれた児童公園
 僕らの前を歩く
 放し飼いの柴犬
 ともだちになりたいと
 柴犬は振り返りふりかえり
 僕たちを見つめた

 雪が音を吸い取るから
 僕たちの足音も聞こえない
 つつましい教会
 十字架に降る雪
 神さまが拵えたこの世界で
 愛しい君と過ごす人生

 露天風呂
 湯けむり
 ぼた雪が
 舞い降りてはとける
 湯の花の香りを
 胸いっぱいに吸い込めば
 とろけるように
 身体中の力が抜けた

 窓の外は白い渓谷
 君は瞳をゆらして
 初めての雪景色を見つめる
 僕は背中から
 そっと君を抱きしめる
 やさしく抱きしめる

 
 

小説家になろう投稿作品
https://ncode.syosetu.com/n9200ib/
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風になれ

2024年02月10日 00時02分12秒 | 詩集
自由になったつもりでいたんだ
そうさ、外の世界のまばゆさに憧れて
流れるままに人生の旅をして

自由になったつもりだった
愚かだった
十字架は十字架として
消えるはずもないのに

でもさ、今からでも遅くはないだろう
人は誰だって
いつでも生まれ変われるのさ

十字架を背負って進んで行け
十字架を背負って越えて行け

人は生まれながらに悲しいと
わかっただけでも
ありがたいこと

風になれ
今こそ風になれ
罪を背負った風になれ
あとは神さまがなんとかしてくださるさ

風になれ
今こそ風になれ
ほんとうに自由になるための
風になれ
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ゆず湯

2024年02月04日 23時16分58秒 | 詩集
 
 キスをしよう
 きみのくちびるは
 ほんのり
 ゆずの香り


 運命ってあるんだね
 きみと出会うまで
 思いもしなかったよ
 そうとは知らずに
 ぼくはきみを
 探していた
 きみはぼくを
 待っていてくれた

 お風呂はきもちいいね
 気持ちがほぐれるね
 きみを愛して
 きみに愛されて
 人生そのものが
 あたたまった

 湯船に一つずつ
 ゆずを浮かべるようにして
 ぼくらの思い出が
 ふえていく
 一日いちにちの
 営みの積み重ねが
 希望の地への道になる

 ぼくたちを
 結びつけてくださった
 神さまに感謝しながら
 心に浮かんだ想いを
 感じるままに
 暮らしていこう


 キスをしよう
 きみのくちびるは
 ほんのり
 ゆずの香り
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