風になりたい

自作の小説とエッセイをアップしています。テーマは「個人」としてどう生きるか。純文学風の作品が好みです。

夏の終わりの夜に

2023年08月24日 06時15分30秒 | 詩集

 夏の終わり
 夜風の吹くホーム
 遠くに花火が上がる
 旅立つ僕を許しておくれ


 幸せになりたかったのに
 どうしてもできなかった
 わかりあおうとすればするほど
 わがままだけを言い合って
 傷つけあう日々
 ほんのすこしだけでも
 譲りあえたらよかったのだけど

 あなたを殺すか
 自分が死ぬか
 堂々巡りの末に出した答えは
 あなたから離れること
 生きていれば
 生きてさえいれば
 なにかを見つけられるかもしれないと

 暗闇に咲く花は
 あなたの未来だと思いたい
 あたりを震わす爆音は
 祝福の声だと思いたい
 消えない悲しみの向こうに
 あなたの幸せが待っていると信じたい


 夏の終わり
 鉄橋を渡る夜汽車
 遠い思い出に舞う花火
 旅立つ僕を許しておくれ

夏・ピアノ

2023年08月02日 06時15分45秒 | 詩集

 ピアノを奏でる
 あなたの白い胸元
 細い指の滑らかな動き
 水のボールが浮かぶように
 夢の音があふれる

 窓の向こうで揺れる夏
 すべてを包む陽射し
 笑顔の咲くひまわり
 季節を急ぐ蝉の声
 ピアノの音に耳を傾けながら
 光を見渡す

  あなたと二人きりなのに
  あなたの肩に手を置きたいのに
  触れてしまえば
  なにかが壊れてしまいそうで
  あなたを見つめてる
  ただ見つめてる

 風を孕んだ白いカーテン
 心に吹き抜けるのは
 あなたへの想い
 ふたりの希望
 遠くまでつづく未来
 教会の尖塔がきらりと光った

 ピアノを奏でる
 あなたの白い胸元
 細い指の滑らかな動き
 水のボールが浮かぶように
 愛の音があふれてる

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