風になりたい

自作の小説とエッセイをアップしています。テーマは「個人」としてどう生きるか。純文学風の作品が好みです。

いきなりポケットへお札を突っ込まれても(連載エッセイ『ゆっくりゆうやけ』第381話)

2018年01月08日 07時15分15秒 | 連載エッセイ『ゆっくりゆうやけ』

 出張で出かけるために上海の浦東空港へ行った時のこと。
 朝七時、浦東空港に着いた。入口の外の灰皿でたばこを吸っていると、東洋人のおじさんに、
「日本人デスカ」
 と外国訛りの日本語で話しかけられた。
「そうです」
 と答えると、
「アア、日本人。韓国人カトオモッタ」
 とおじさんは言い、
「私ハ、北朝鮮人」
 とやおら財布からお札を取り出す。
「偉大ナ指導者」
 北朝鮮のお札は初めて見たけど、確かにかの国の偉大な指導者の肖像が印刷してある。中国のお札には毛沢東の肖像が印刷してあるけど、北朝鮮も同じことをしているのだなと思いながら、珍しさに釣り込まれて覗き込んだ瞬間、
「アゲル」
 とおじさんは僕のズボンのポケットにお札を突っ込もうとした。
「要らない」
 僕は慌てて逃げた。
 片言の日本語を操るくらいだから日本へ行ったことがある人なのだろう。親切でくれようとしたのかもしれないけど、知らない人からお金をもらうわけにはいかないから。



(2016年10月25日発表)
 この原稿は「小説家なろう」サイトで連載中のエッセイ『ゆっくりゆうやけ』において第381話として投稿しました。
 『ゆっくりゆうやけ』のアドレスは以下の通りです。もしよければ、ほかの話もご覧ください。
http://ncode.syosetu.com/n8686m/


天空の鐘

2018年01月06日 07時15分15秒 | 詩集

 天空の鐘は鳴る
 目覚めよと
 鳴り続ける
 世界が
 壊れ続けるからこそ
 目覚めよ

 死と不確定性
 その二者択一しか
 ないように思えても
 それが世界の
 すべてではない
 飛び越えて
 こちらへこい

 戦うべき相手を
 取り違えてはいけない
 灰色の平凡に
 取り込まれるな
 人の好さそうなふりをした
 悪を見抜け

 真実は
 いつもそばにある
 希望は
 そばにありつづける
 息ができないほどに
 苦しくても
 あきらめるのは
 後になってからでいい

 天空の鐘は鳴る
 目覚めよと
 鳴り続ける
 ほんとうに世界が
 壊れきってしまう前に
 目覚めよ



恋のはじまり

2018年01月04日 20時15分15秒 | 詩集

 恋のはじまりは
 みずいろの空
 淡い水彩画の
 空を眺めてる

 透きとおる色が
 きれいな色が
 まざりあって
 不思議な絵を描く

 なにもできなくて
 力が抜けて
 ぼんやりしている
 自分がおかしい
 
 あした
 君を好きに
 なっているかもしれない


 夢のはじまりは
 あんず色の夕焼け
 街のざわめきが
 なぜか心地いい

 なにげない風が
 僕を呼ぶ声が
 淡い夕映えに
 恋の歌かなでる

 胸がときめいて
 なにを見ても
 君を探してる
 自分がおかしい

 あした
 君を好きに
 なっているんだろうな

 あした
 君を好きに
 なっていたいな


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