Cバラックの突き当たりは3つに区切られている。左側は小便用でコンクリートの打ちっ放しだ。朝顔なんて物はない。手前から奥にかけて傾斜がついているだけ、いつも小便で濡れているので入口から放尿する。少し前の方でやれば良いのだが滑るし小便で濡れたサンダルで歩くと出口の住人から文句が出る。右側は大便用だ。用が済んだ後お尻を洗う水が汲み置きしてある。真中が身体を洗う場所で毎朝はジャクソンの専用のようになっている。そこでドイツ人のトーマスが身体を洗っていた。この寒い夜、裸になって1時間は過ぎただろう、目はトローンとしてその洗い方は誰が見ても病的だ。動作ものろのろとして同じ事を繰り返していた。ゲームをしていたジャクソンも首を傾げていたし他の皆も笑っていた。そんな視線を全く感じる風もなく自らの世界に入り込んでいた。それは1人の狂人のようだった。ここのドイツ人は3人とも変っている、ピーターもマーシャルも、それもこれもドラッグのせいだ。それと規制された刑務所の生活が精神を歪めてしまったのかもしれない。真中の通路をアフリカンと南米人のホモが手をつないでウオーキングしている、スリランカ人はトランプゲームで取っ組み合いをやらんばかりに興奮していた。馬鹿につける薬はない。
明日は日曜日か、何もすることがない。まだクラスがあった方が良い午前中、早く時間が過ぎるから。皆もやることがないので井戸端で身体を洗ったり洗濯をしたり時間つぶしだ。床屋が3~4ヵ所で店開きをして列を作っていた。何故なのかインド人もアフリカ人も櫛で髪を綺麗に整える、誰に見てもらう訳でもないだろうに。低いカーストのインド人達は忙しい、各バラックのトイレや房内の掃除、それに天気が良ければ洗濯の注文が多い。