入口に立っていたマリーに直ぐ終るから煙草とジュースを用意してくれるよう頼んだ。手錠や腰紐を掛けられた訳ではないが何とも調子が悪い。周りの陰口や白い目に気が引ける。一人の刑務官がカウンターに行き書類を見せて説明をしていた。ぼくは目立たない待合室の奥に刑務官を連れて移動した。小切手のサインをちょうど書き終わった頃、日本人のスタッフが来てくれた。現金化は速やかに処理され彼がお金を持って来てくれた。
「ご迷惑かけます」
「お気をつけて」
銀行のエリート社員の彼と刑務所に収監されている犯罪者のぼく、その落差は余りにも大きい。ちょっと落ち込んだ。
銀行の外に出てお金の入った紙袋をマリーに渡しジュースとマッチ、煙草の箱から2本だけ煙草を受取った。護送車に乗り込み刑務官にバクシシのお金を握らせ煙草に火を点け煙を深く吸い込んだ。面倒な事が一つ片付いた。護送車はオールドデリー、ティスハザール裁判所へ向かって走り出した。
どんよりとした重い梅雨空が続いている 今夜から有り難くない大雨注意報
日照不足だがミニトマトは健気に実をつけている 感謝の気持ちでいただく