ガンジス・河の流れ

インド・ネパール。心の旅・追想

第3話 出店のババ・・・10  大金50ルピー

2015-11-20 | 第3話 出店のババ

 4月も後半となるとヒマラヤの取っつきに位地するリシケシでも暑さが厳しくなった。
出店のババが店を開く時間も午前中と夕方になっている。陽射しが強い午後は人通りも少なく商売にならないからだ。朝、ババに会うとやけに機嫌が良い、何かあったのかと聞くとババはエックモゲが50ルピーで売れたと嬉しそうだ。エックモゲとは菩提樹の実で一本の割れ目が入ったあの卑猥なもので値段は付けられないと言っていた逸品だ。よく売れたものだが、この河畔沿いの道を通るインド人で50ルピーを払える者はそういないだろう。ここ数日ババの商売はあまり良くない、お金にいき詰ったババは参道の数珠屋にでも持ち込んで売り捌いたのではないだろうか。
「ババ、アッチャー・ビジネス・ハィ」(良い商売をした)とぼくが言うと、仕入れ値を割って利益はないとババは渋い顔をしている。まあそれでも最近にはなかった大金50ルピーを手にしてババの機嫌が悪かろうはずはない。しかしこの50ルピーも1週間もしないで散財してしまい、またお金に行き詰まってしまうのではないだろうか。これから5月の熱暑に入り8月の雨季が過ぎるまでリシケシでは商売にならない。涼しい高地にある聖地への移動が待っている。

 

 昼飯を作るから食べていけとババが誘ってくれた。アシュラムの食堂は信者で溢れ順番待ちをしなければならない、ババ達とここで昼食をすることにした。野菜はこの頃からそろそろゴビ(カリフラワー)のシーズンで近在の村から運ばれてくる。荷車で売りにくるのを天秤ばかりで買うがどの八百屋にいってもゴビ一色になる。食堂も同じでちょっと変ったサブジ(野菜のカレー煮)を食べたいと何軒か回ってみるが「キャー・サブジ」(何の野菜?)「アル・ゴビ」(じゃが芋とカリフラワー)と愛想のない食堂の兄ちゃんの返事がくる。
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