「動くな、じっとしてろ」
と言ってぼくはアシュラムへ急いだ。気持ちは焦っているのだがアシュラムへの上り坂はきつい。途中で休憩しているマム・ヨギに会った。この坂道を登っているマム・ヨギを見たのは初めてだ。ぼくは彼女を追い越し部屋へ急ぐ。ぼくが日本を出るとき病院に勤めている友人が薬を用意してくれた。抗生物質のどれも効かなかったらこれを飲め、とカプセルの薬1シートを渡してくれた。ババ達は近代医療の薬を飲んだことはないだろう。薬が強く作用し過ぎることを心配したが、カプセルを飲ませようとぼくは決めた。目尻からたらりと頬に流れる赤い血、眼球に傷がついているのであればババは痛がる筈だ。ババ達は鏡など持っていない、自分の状況が分からないのだ。片目のババが鏡で自分の顔を見れば事態の重大さに気づくだろう。とにかく急いでこの薬をババに飲ませなければならない。だがぼくはこの薬を使ったことがない。どんな症状に効くのか薬に頼るしかぼくは方法を知らない。アシュラムの坂を下りていくとまだマム・ヨギが休んでいる。さっき見た場所より少し登ったようだがもう人の手助けがなければこの坂の上り下りは出来ないだろう。今度マム・ヨギがこの坂を下りるときはガートの焼き場ではないだろうか、素晴らしいマム・ヨギだが。片目のババに薬を飲ませ必要以外には動かないように強く言いきかせた。
翌朝ぼくは心配で瞑想が終るとすぐ別館下へ行った。片目のババは立ってうろうろしている。近寄ってババの目を見ると出血は止まっているようで安心した。そこへババ達がぼくを取り囲むようにして集まり始めた。彼等は口々にすごい薬だ何という薬なのか、俺にも一つくれないか俺にも俺にも、と言って手を出す。
「高いんだぞ一つ100ルピーだぞ、100ルピーだせ」
とぼくが言うと皆は手を引っ込めしゅんとした。実際100ルピー(約300円)より高い薬だろう、ただ日本とインドのお金の価値観が違うので何とも言えないが。
と言ってぼくはアシュラムへ急いだ。気持ちは焦っているのだがアシュラムへの上り坂はきつい。途中で休憩しているマム・ヨギに会った。この坂道を登っているマム・ヨギを見たのは初めてだ。ぼくは彼女を追い越し部屋へ急ぐ。ぼくが日本を出るとき病院に勤めている友人が薬を用意してくれた。抗生物質のどれも効かなかったらこれを飲め、とカプセルの薬1シートを渡してくれた。ババ達は近代医療の薬を飲んだことはないだろう。薬が強く作用し過ぎることを心配したが、カプセルを飲ませようとぼくは決めた。目尻からたらりと頬に流れる赤い血、眼球に傷がついているのであればババは痛がる筈だ。ババ達は鏡など持っていない、自分の状況が分からないのだ。片目のババが鏡で自分の顔を見れば事態の重大さに気づくだろう。とにかく急いでこの薬をババに飲ませなければならない。だがぼくはこの薬を使ったことがない。どんな症状に効くのか薬に頼るしかぼくは方法を知らない。アシュラムの坂を下りていくとまだマム・ヨギが休んでいる。さっき見た場所より少し登ったようだがもう人の手助けがなければこの坂の上り下りは出来ないだろう。今度マム・ヨギがこの坂を下りるときはガートの焼き場ではないだろうか、素晴らしいマム・ヨギだが。片目のババに薬を飲ませ必要以外には動かないように強く言いきかせた。
翌朝ぼくは心配で瞑想が終るとすぐ別館下へ行った。片目のババは立ってうろうろしている。近寄ってババの目を見ると出血は止まっているようで安心した。そこへババ達がぼくを取り囲むようにして集まり始めた。彼等は口々にすごい薬だ何という薬なのか、俺にも一つくれないか俺にも俺にも、と言って手を出す。
「高いんだぞ一つ100ルピーだぞ、100ルピーだせ」
とぼくが言うと皆は手を引っ込めしゅんとした。実際100ルピー(約300円)より高い薬だろう、ただ日本とインドのお金の価値観が違うので何とも言えないが。
一杯どうぞ。