国境・・・13
無理をして2日に出発しないで良かった。マリーの気紛れで8日の出発は流れた。逃亡の第1難関である国境を抜ける日は今日だったのだ。2日でも8日でもない、今日、10日しかなかったのだ。昨夜から何度かあった逃亡計画の重要な選択肢の分岐点を間違うことなく進んできた。ぼくは迷い続けた。だが追い詰められてだした、最後の決断には誤りはなかった。窓の外を見ていた、気持ちの良い天気だ。
ぼく達が乗った力車の車夫がレストランに入って来た。何の用があるのか、ボスが払ったお金に不満があるのか、マダムのところへ行って文句を言っている。しかしマダムの方が貫禄が上だ、彼女にまくし立てられ車夫は渋々と出て行った。まずいな。車夫が直接イミグレーションに入って行く事はない、がそれらしいカーストのインド人に話しを持ち込めばイミグレーションの捜査があるかもしれない。カトマンズ行きの夜行バスの発車は夕方からしかない、出来るだけ早くスノウリを出発する方がベターだ。
ボスが出掛けて30分は経っている、遅いなと思っているとちょうど戻って来た。ぼくがテーブルの上に身を乗り出し手招きをするとボスが顔を寄せてきた。
「車を一台チャーター出来ないか?カトマンズまでだ」
「カトマンズまでか?車はあるかもしれないが高いぞ」
「当たってみてくれ、値段もな」
分かった、と言うと再びボスは出て行った。
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