UCLAの小川先生は尊敬しています。
インプラントのエイジングを証明し、それを取り除く紫外線照射器を開発されたことは医学の発展上素晴らしいことです。
そして、5-Dジャパンの船登先生等、光機能化を率先して進められ、臨床上の成果、効果を挙げられていることも素晴らしいことであり、否定するつもりはありませんし、私は5-Dの先生方は皆好きで、大変に尊敬しています。
しかし、学問的、医学的立場として、真理に対して真摯であらねばならない、と信じる私は、心苦しいのですが光機能化に対して釈然としないものを感じます。
最大の理由は、チタン表面を新鮮化させ骨の細胞との統合、生着を100%を目指す、それによって即時荷重始めとする早期のインプラント機能化が可能になる、と言う理論展開が解せないのです。
確かに、小川先生の研究によってインプラントの表面が時間経過と共に炭素がくっ付いて、骨との統合、生着を阻害する、それ故に骨接触率は従来言われているように70%もないと言われていたのはそれが原因だった、と突き止められたのは大変な医学上の発見、成果として素晴らしいものであったと言えるでしょう。
そこで、表面の炭素を取り除くのに紫外線が有効である、それに特化した機械を開発すると言うのも大変高く評価できます。
実際に小川先生が開発された特定の周波数の紫外線では、98%以上の驚異的骨との接触率が得られる、というのも本当に凄いことでしょう。
しかしです、その後は?という疑問には、まだ何も答えられていないのではないでしょうか?
つまり、生体の中は、常に細胞の消滅と再生が繰り返され、恒常性が維持されています。
最初の植立の時に、骨との接触率が驚異的に高くても、それが長年維持されるのか、それともその患者さん自身の体に合わせてそのまま変わらないでくっ付き続けている、というのは間違いがないのでしょうか?
何故こんなことを言うのかと言うと、人は必ず高齢化する、言い換えれば骨の密度が落ちるのは定め、だからです。
年をとれば背が縮むのは、誰もが知っている事実です。
それは人の体が変化し続ける、言い換えるなら少しづつ退化してしまうのは避けられないのです。
そんなこと言い出したら、インプラント治療自体も考えないといけなくなるのかも知れませんが、私の考えはこうです。
つまり、インプラント自体の表面改質は認めるけれども、生体自身への治癒の働き掛け、刺激や負荷を加える、人の体自身を治す、改善する方向性の方がもっと重要なのではないのですか?と言うことです。
医療人は、患者さんの体の治療後の改善の維持を、根本的に目指すものなのではないでしょうか?
それに対しては、光機能化は何か意味があるのでしょうか?
瞬間的効果しかないのではないでしょうか?
だから私は懐疑的なのです。
いくら紫外線当ててくっ付きを良くしても、生体内に入れば必ず血液に触れ、その後骨細胞が付いたとしても、吸収と添加は絶え間なく続き、血液には当然色々な成分が流れていますから、それが表面をある程度のレベルのものに、結局は落としてしまうのではないでしょうか?
疑問が非常にあるのです。
恒常性の維持の中で、細胞が生まれ変わり再生しても、インプラント表面が生体内で再生、フレッシュ化するのかどうか?
まずそのようなことは有り得ないでしょう。
私は瞬間的効果しかないものだろう、と感じます。
それで良いじゃないか、と言われたらそれまでですが、それなら、時間経過の中で本当に生体の方の改善、中身の良くなる治療の方が重要なのではないですか?が私の主張です。
時間経過の中で患者さん自身の体の骨を改善するのは、今の時点では超音波治療器が最もエビデンスがあるものです。
エビデンスなんて本来私は大嫌いですが、超音波治療器に関しては、遂に整形外科領域では新鮮骨折への保険適用が認められ、今爆発的に売れているそうです。
骨を治すには超音波は、医学界の常識になっているのです。
なので、嫌いな言葉ですがエビデンスを使いました。
更に言えば、超音波は元々美顔器で使われているもので、骨だけでなく軟組織、皮膚や歯肉などの治癒促進する、つまり、手術した後の傷口の治癒促進に効果があるのです。
骨にも歯茎にも、傷口にも治癒促進効果がある。
そんな真似が光機能化で出来ますか?
出来ませんよね。
本当の意味での、医学的見地からの治癒を早めるのは、光機能化ではなく、超音波治療なのです。
私は、それを主張します。
実例として、私は2000年から即時荷重していますが、実は超音波は2001年の終盤頃から使い始めており、その成果、私自身の即時荷重の成功率の異常なほどの高さ98%以上、の裏にはこれがあったのです。
2001年当時即時荷重の成功率はミシガン大のホーレイ・ワン教授ですら70%切り、即時荷重は駄目だ、と言われていた同時代でです。
繰り返しますが、光機能化が無駄だ、と言っている訳では決してありません。
しかし、そこまで治癒促進、機能促進を考えるなら、超音波治療器を外すのは愚かなことだ、と私は明言します。
だって、光機能化の機械は270万もして、天下のウシオ電気らしくないな、と言うものなのに、超音波治療器の方は40万位ないんですよ。
どちらが最初に取り入れるべきものですか?
私は超音波でしょう、と言い切ります。
チタンの治療する意味、価値と、生体の治療する意味、価値を比べて考えたら自明の理ではないでしょうか?
だいたい、表面の炭素による時間経過の汚染が判明したのだから、インプラントメーカーは対策を取れば良い。
それが本道ではないですか?
現に、ストローマンアクティブは、製造後直ぐに薬液(食塩水らしい)に漬けられています。
そうすれば、表面は空気に触れないで、炭素の汚染からも免れるでしょう。
研究成果は、素晴らしい。
臨床に活かすのも素晴らしい。
しかし、高価な機械を造り上げ売りまくるのは如何なものなのか?私は多大に疑問があります。
販売するなら、せいぜいレジン照射器程度の販売価格にするべきではないか、と思います。
もう巷では300台も売れたとか売れないとか。
勿論、私は小川先生とか船登先生の純粋さを信じており、バックマージンを常に要求する、と言う某巨大スタディグループ総帥みたいなことはしていない、と信じています。
なら、天下のウシオ電気がボロ儲けし過ぎでしょう。
ビジネス界では会長は非常に人物として知られ、色々と指導とか講演とかされていますが、今回の件では私はやり過ぎではないか?と感じて仕方がないです。
素晴らしい発明をしても、敢えて世界に貢献する為に、特許を取らない人物も史上にはいます。
インプラントの開祖ブローネマルク教授もそう言う一人です。
チタンが骨とくっ付く、と言う現象を発見しても、彼はそれを特許で押さえませんでした。
それよりも人類に貢献する道を選ばれたのです。
だからこそ、今世界中でインプラント治療が行われ、そのお蔭で救われた患者さんは数え切れないほどなのです。
そのことを、私たちは心して決して忘れてはいけない、と思います。
叩かれることを承知の上で、私は意見表明をしました。
光機能化は、メーカーサイドで処置して置くべきです。
開業医が高い機器を買わなければいけない、と言うのは本末転倒でしょう。
現に、世界ではストローマンが既にそう言う対応をしています。
但し、このインプラントは国内未承認で手に入りませんが。
メーカーが、炭素汚染の危険性の少なくなる状態で臨床の現場に届けるべき、と明言して締め括ります。