いとうせいこうコメディ映画講義 マルクス・ブラザーズ特集
@東京国立博物館・平成館(2008年11月24日)
マルクス兄弟の「吾輩はカモである」と「ルームサービス」を上映。
「カモ~」上映後、ケラリーノ・サンドロヴィッチといとうせいこうの解説付き。
以下、講義の様子を簡単にまとめました。
ケラさんのコメントをメインに拾ってます。
ケラ 小学校時代には、マルクス兄弟の映画は見られなかった。
中原弓彦(小林信彦)の「世界の喜劇人」や
「マルクス兄弟のおかしな世界」を読んで知ることしかできなくて。
(中原さんはチャップリンよりマルクス兄弟とキートンを評価していたので)
好きだったチャップリンはそんなに悪いのか…と思ったりした。
東武デパートの30人くらいしか入らない上映会で
「マルクスの二挺拳銃」を見て、
そのあと、歌舞伎町のアートビレッジで
「オペラは踊る」と「吾輩はカモである」の同時上映があることを、
当時、映画館にしか置いてなかったぴあで知って、
前日から並んで待ってた。
いとう 俺はその上映で初めて見たわ、確か。
ケラ 並んだと言っても、ボクしかいなかったけど。
前日は「鉄道員」を上映してたんだよ。
てっきり並ぶもんだと思ってたら誰もいなくて。
当日の始発で大学生がやっとひとりやってきて、仲よくなった。
「オペラ~」を見にNYまで行こうと思っていたほどだったから、
この上映会のおかげでパスポートを取らなくてすんだよね(笑)。
ラジカセ持って行って録音した。他の観客もものすごくウケてたな。
いとう 映画泥棒じゃん! NO MORE映画泥棒!w
ケラ 途中でテープひっくり返したりしてw
でもガチャガチャやっても分からないくらい、
熱狂的なもりあがりだったんだよ。
あの人たち、けっこう歳サバ読んでるんだよね。
小林信彦さんの著書では、映画デビュー当時、
チコが40過ぎてて、グルーチョが30代半ばでって書いてあるけど、
実際はグルーチョも40歳超えてたらしい。
「~カモである」のときなんてそこから4作後なわけだから…。
その年齢で「~カモ」のミュージカル・シーンはすごいよね。
いいかげんな振り付けで。
「御冗談でショ」の時の…この邦題もどうかと思うけどw、
「御冗談でショ」のミュージカルシーンも最初見たとき、衝撃的だった。
ケラ 68年の(学生運動が起こった)フランスでは暴動になるくらい
マルクス兄弟が受けてたらしい。
いとう 時代がパンクになるたびにマルクス兄弟が受けるよね
ケラ 「カモ」ではチコもハーポも得意の楽器演奏を省略してる。
排除してまで笑いを追求してるね。
いとう グルーチョがかぶったツボに書かれた顔、かわいいよね。キュートなんだよ
ケラ ハーポあたりがキュートな雰囲気を持ってくる。
自転車屋で(ハーポの持ってる)「ブーッ!」てラッパ(警笛)買っちゃったもん。
ただ、鳴らしてみたくて。
あと、チコみたいにピアノ弾こうとするとこのへん(指が)血だらけになるよ。
小学校の音楽室でマネしようとして、先生に怒られたことあるw
ケラ 誰も知らないかもしれないけど、
永田キングって芸人がグルーチョの扮装をしてたらしい。
エンタツアチャコのエンタツとか…古川ロッパも好きなんじゃないかな。
グルーチョはインテリ受けするよね。
いとう ベケットも「ゴドーを待ちながら」で帽子芸をやりたかったわけだしね
ケラ 「カモ~」のあとは、兄弟は恋人ふたりを支援する役回りになっていく。
小林信彦さんじゃないけど、独自性という意味では、
やっぱりパラマウントの5作品だね。
最後の方は、チコのカードの負けを取り戻すために映画作ってたわけだしw
実はマルクス兄弟の作品をまんま舞台でやる計画も、
一応なくはないんだけど。
これからやるような人は現れないだろうし、
失敗してもいいからやってみるべきかもね。
いとう でも配役は難しいよー?
ケラ マーガレット・デュモンの役は池谷のぶえにやってもらうつもりだけどw
彼女しかいないと思う。それは本人にも言ってあるんだ。
兄弟は、マーガレット・デュモンといると
安心してアドリブやってる気がするよね。
彼女は兄弟と舞台から一緒にやってたはず。
いとう ケラさんおすすめのマルクス映画は?
ケラ 「オペラは踊る」と「~二挺拳銃」は見やすいよね。
いとう 家が倒れちゃうのはなんだっけ?
ケラ 「マルクス捕物帖」。ハーポが家に寄りかかってて、手を離すと倒れる。
いとう そのシーンのために、家のハリボテ作ってるわけだよねw
ケラ 「おまえは家を支えてるつもりなのか」
ってハーポが訊かれて、うなずくんだよねw
MGM時代も豪華だよ。
「オペラ~」の船上のシーンも、コメディとは思えないクオリティだもん。
いとう 不条理という言葉は、訳すとばかばかしいって意味になる。
英米には不条理という中に、
笑っちゃうような要素も入ってるんじゃないのかな
■ここで、ケラ監督作品「罪とか罰とか」の予告編を初公開。
いとう 兄弟最後の作品は「ラブ・ハッピー」になるわけですけど。
ケラ 兄弟というか、ハーポが主演の映画で。
「ラブ・ハッピー」は8ミリフィルムで見ました。
いとう それは買ったの?
ケラ 輸入で買ったの。「~捕物帖」と「ラブ・ハッピー」は4万8千円で買った。
親父の貯金、200万円おろして他のフィルムとまとめて買いました
いとう バカ息子だわw
ケラ トリオのコメディ・チームって、映画では初めてだったんじゃない?
3人だと、一回見ただけじゃよく分からない。
4、5回見て発見することもある。
いとう 双方向なんだね。みんなでみないとわかんない
■ケラ演出の舞台「しとやかな獣」の話から、
いとう氏が土曜日の小沢昭一氏のパフォーマンスについて語る。
二曲披露するつもりが、20分歌い続けて止められなかったエピソード。
いとう 俺はもはや蛭子さんでさえ仕切れるからね!
自信があったんだよ、仕切りは。
でも、ものの2、3秒で小沢さんに(舞台から)追い返された。
ケラ 猛獣使いみたいだね。
いとう 猛獣ですよ、あれは!w
でもね、結局、人間力が出ちゃうんじゃないかって思う。
40、50過ぎてああいうことやってるって、説得力が違うよね。
ただふざけただけじゃ説得力は出ないんだよ
ケラ ブルータスでいとうさんが宮沢章夫さんと対談してたけど、
「マルクスもモンティ・パイソンもすごい稽古を重ねてた」って。
それを本番で崩すっていうのがスマートなんだね
いとう 三木のり平さんは、本番で、客には見えないのに
鼻の穴に黒い糸貼って、息するたびにピロロロ~ってなびかせてたってw。
共演する女優はたまったもんじゃないよ
ケラ のり平さん、扉座の稽古場に訪問した時に、時計があるのを見て、
「時計なんていらない」って言って取らせたんだって。
神聖な場所には時計はいらない、って。退館時間とかあるのにね
いとう その一方で、鼻から糸出してんだよ?w
@東京国立博物館・平成館(2008年11月24日)
マルクス兄弟の「吾輩はカモである」と「ルームサービス」を上映。
「カモ~」上映後、ケラリーノ・サンドロヴィッチといとうせいこうの解説付き。
以下、講義の様子を簡単にまとめました。
ケラさんのコメントをメインに拾ってます。
ケラ 小学校時代には、マルクス兄弟の映画は見られなかった。
中原弓彦(小林信彦)の「世界の喜劇人」や
「マルクス兄弟のおかしな世界」を読んで知ることしかできなくて。
(中原さんはチャップリンよりマルクス兄弟とキートンを評価していたので)
好きだったチャップリンはそんなに悪いのか…と思ったりした。
東武デパートの30人くらいしか入らない上映会で
「マルクスの二挺拳銃」を見て、
そのあと、歌舞伎町のアートビレッジで
「オペラは踊る」と「吾輩はカモである」の同時上映があることを、
当時、映画館にしか置いてなかったぴあで知って、
前日から並んで待ってた。
いとう 俺はその上映で初めて見たわ、確か。
ケラ 並んだと言っても、ボクしかいなかったけど。
前日は「鉄道員」を上映してたんだよ。
てっきり並ぶもんだと思ってたら誰もいなくて。
当日の始発で大学生がやっとひとりやってきて、仲よくなった。
「オペラ~」を見にNYまで行こうと思っていたほどだったから、
この上映会のおかげでパスポートを取らなくてすんだよね(笑)。
ラジカセ持って行って録音した。他の観客もものすごくウケてたな。
いとう 映画泥棒じゃん! NO MORE映画泥棒!w
ケラ 途中でテープひっくり返したりしてw
でもガチャガチャやっても分からないくらい、
熱狂的なもりあがりだったんだよ。
あの人たち、けっこう歳サバ読んでるんだよね。
小林信彦さんの著書では、映画デビュー当時、
チコが40過ぎてて、グルーチョが30代半ばでって書いてあるけど、
実際はグルーチョも40歳超えてたらしい。
「~カモである」のときなんてそこから4作後なわけだから…。
その年齢で「~カモ」のミュージカル・シーンはすごいよね。
いいかげんな振り付けで。
「御冗談でショ」の時の…この邦題もどうかと思うけどw、
「御冗談でショ」のミュージカルシーンも最初見たとき、衝撃的だった。
ケラ 68年の(学生運動が起こった)フランスでは暴動になるくらい
マルクス兄弟が受けてたらしい。
いとう 時代がパンクになるたびにマルクス兄弟が受けるよね
ケラ 「カモ」ではチコもハーポも得意の楽器演奏を省略してる。
排除してまで笑いを追求してるね。
いとう グルーチョがかぶったツボに書かれた顔、かわいいよね。キュートなんだよ
ケラ ハーポあたりがキュートな雰囲気を持ってくる。
自転車屋で(ハーポの持ってる)「ブーッ!」てラッパ(警笛)買っちゃったもん。
ただ、鳴らしてみたくて。
あと、チコみたいにピアノ弾こうとするとこのへん(指が)血だらけになるよ。
小学校の音楽室でマネしようとして、先生に怒られたことあるw
ケラ 誰も知らないかもしれないけど、
永田キングって芸人がグルーチョの扮装をしてたらしい。
エンタツアチャコのエンタツとか…古川ロッパも好きなんじゃないかな。
グルーチョはインテリ受けするよね。
いとう ベケットも「ゴドーを待ちながら」で帽子芸をやりたかったわけだしね
ケラ 「カモ~」のあとは、兄弟は恋人ふたりを支援する役回りになっていく。
小林信彦さんじゃないけど、独自性という意味では、
やっぱりパラマウントの5作品だね。
最後の方は、チコのカードの負けを取り戻すために映画作ってたわけだしw
実はマルクス兄弟の作品をまんま舞台でやる計画も、
一応なくはないんだけど。
これからやるような人は現れないだろうし、
失敗してもいいからやってみるべきかもね。
いとう でも配役は難しいよー?
ケラ マーガレット・デュモンの役は池谷のぶえにやってもらうつもりだけどw
彼女しかいないと思う。それは本人にも言ってあるんだ。
兄弟は、マーガレット・デュモンといると
安心してアドリブやってる気がするよね。
彼女は兄弟と舞台から一緒にやってたはず。
いとう ケラさんおすすめのマルクス映画は?
ケラ 「オペラは踊る」と「~二挺拳銃」は見やすいよね。
いとう 家が倒れちゃうのはなんだっけ?
ケラ 「マルクス捕物帖」。ハーポが家に寄りかかってて、手を離すと倒れる。
いとう そのシーンのために、家のハリボテ作ってるわけだよねw
ケラ 「おまえは家を支えてるつもりなのか」
ってハーポが訊かれて、うなずくんだよねw
MGM時代も豪華だよ。
「オペラ~」の船上のシーンも、コメディとは思えないクオリティだもん。
いとう 不条理という言葉は、訳すとばかばかしいって意味になる。
英米には不条理という中に、
笑っちゃうような要素も入ってるんじゃないのかな
■ここで、ケラ監督作品「罪とか罰とか」の予告編を初公開。
いとう 兄弟最後の作品は「ラブ・ハッピー」になるわけですけど。
ケラ 兄弟というか、ハーポが主演の映画で。
「ラブ・ハッピー」は8ミリフィルムで見ました。
いとう それは買ったの?
ケラ 輸入で買ったの。「~捕物帖」と「ラブ・ハッピー」は4万8千円で買った。
親父の貯金、200万円おろして他のフィルムとまとめて買いました
いとう バカ息子だわw
ケラ トリオのコメディ・チームって、映画では初めてだったんじゃない?
3人だと、一回見ただけじゃよく分からない。
4、5回見て発見することもある。
いとう 双方向なんだね。みんなでみないとわかんない
■ケラ演出の舞台「しとやかな獣」の話から、
いとう氏が土曜日の小沢昭一氏のパフォーマンスについて語る。
二曲披露するつもりが、20分歌い続けて止められなかったエピソード。
いとう 俺はもはや蛭子さんでさえ仕切れるからね!
自信があったんだよ、仕切りは。
でも、ものの2、3秒で小沢さんに(舞台から)追い返された。
ケラ 猛獣使いみたいだね。
いとう 猛獣ですよ、あれは!w
でもね、結局、人間力が出ちゃうんじゃないかって思う。
40、50過ぎてああいうことやってるって、説得力が違うよね。
ただふざけただけじゃ説得力は出ないんだよ
ケラ ブルータスでいとうさんが宮沢章夫さんと対談してたけど、
「マルクスもモンティ・パイソンもすごい稽古を重ねてた」って。
それを本番で崩すっていうのがスマートなんだね
いとう 三木のり平さんは、本番で、客には見えないのに
鼻の穴に黒い糸貼って、息するたびにピロロロ~ってなびかせてたってw。
共演する女優はたまったもんじゃないよ
ケラ のり平さん、扉座の稽古場に訪問した時に、時計があるのを見て、
「時計なんていらない」って言って取らせたんだって。
神聖な場所には時計はいらない、って。退館時間とかあるのにね
いとう その一方で、鼻から糸出してんだよ?w
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