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マーク・ゲイティス マスタークラス at ヘイマーケット王立劇場

2015-11-04 | 2015年秋、英国の旅
■10月16日 続き■



バーモンジー・マーケットで買い物の後は、ロンドンのど真ん中、チャリング・クロスまで戻り、
ヘイマーケット劇場へ向かいました。
未来ある若者に演劇・映像作品で活躍する俳優・製作者から学ぶ機会を与えるために行われる
マーク・ゲイティス出演のトークイベント"Masterclass"を見るためです。
14:30開始で、30歳未満はなんと入場料無料。
私は残念ながら無料ではない年頃なので、 12ポンドのチケットを購入。

ボックス・オフィスでいつ頃来ればいいか確認したところ、15分前で大丈夫とのことだったので、
近くのPret a Mangerで腹ごしらえをしてから向かいました。
ただ姿を見て、トークを聞くだけなのに、この時既に緊張感マックス!
そして教えてもらった通り15分前に行って、下手側の前から2列目の席に座ることが出来ました。


↑ここがTheatre Royal Haymarket。マイクロフトのディオゲネス・クラブのあるペルメル街のすぐ傍です。

若者向けの企画なので、正直学生に囲まれて浮かないか心配でした。
確かに私のいる前方は業界志望の若い男女が多かったように見受けられたのですが、
後ろは年配の方のグループや私より年上の男性も多かったです。



ソワソワと時計を見ながら待っていると、舞台上のスタッフの女性がマークを招き入れ、
チェックのシャツにグレーの三揃えスーツ、紫の縦縞ソックスに茶色い革靴、
そしてジャケットのフラワーホールには「スペクター」のバッチを付けたマークが、颯爽と現れました!

出演中の"Three Days in the Country"で見せているままの長めの顎髭を蓄えて、
足を組んで座り、ライトを背にするマークの姿はあまりに至近距離すぎて、
しばらくは直視出来ませんでした(笑)。(/ω\)

登場後は早速、Q&Aから始まりました。
マーク自身がひとりひとり挙手したファンを指名し、質問に答えていきます。
時々手を上げずに投げかけるファンの声を拾ったりすることもあるし、
鼻をグズグズさせててくしゃみしている人には、壇上から'Bless you!'を声を掛けることも。
(私ったら、日本にいたらクシャミ鼻水出まくりなのに、何故こういう時にくしゃみが出ないのかな??)

ここからは書き留めたトークの内容をまとめていきます。
今までに聞いた事のある内容もありますが、読みやすいように少しずつ分けて書いていきますね。


【劇場の大きさ】
今年はドンマー・ウェアハウスやナショナル・シアターと、大小問わず舞台に出演しているマーク。
例えば小さなリハーサルスタジオから、オールド・ヴィックのような大きな劇場で本番をする時は、
叫ぶように台詞を話すようになってしまうので調整が必要になるそう。
ドンマーで"The Recruiting Officer"に出演した時は、劇場が小さいから観客にも絡んだりしたけど、
ナショナル・シアターで上演中の"Three Days in the Country"は
「ココとココくらいの距離で会話している」と実際に立ち上がって説明していました。
とはいえ、大小どちらの劇場も好きだとか。
8月に「イーリアス」のマラソン朗読があった時、
ナショナル・シアターから会場のアルメイダ劇場は川を挟んで向かいにありますが、
わざわざ一度家に戻ってから劇場に向かうことになり、忙しかったという話も。
アルメイダ劇場の大きさの印象は、こんなに小さかったんだ?と感じたそうです。

【オリヴィエに憧れて】
ドンマーの"The Recruiting Officer"で共演したGawn Graingerさんは"Three Days in the Country"でも共演していて、
ローレンス・オリヴィエの友人としても知られていますが、
マークが"The Recruiting Officer"で演じたCaptain Brazenをオリヴィエが生前演じており、
Grainger氏によれば、オリヴィエは登場の際、
毎回帽子を舞台の袖から舞台上の帽子掛けに放り投げて、毎回成功させていたんだそう。
マークはこれを真似してドンマーの二階席に向かって帽子を投げていましたが、
毎回届かず観客の上に落ちてしまい、毎回観客に頼んで回収していたとw
(どうやら客の頭にすっぽり収まるように投げたかったようです。)
「オリヴィエはこれを毎回やってたのか?」と悪戦苦闘し、結局上手くいったことはなかったとのこと。
(私が初めてマークを生で見たのがまさにこの瞬間だったので、
 帽子を投げていたことも非常に鮮明に覚えているし、この話題が出て個人的に嬉しかったです。)



【劇場中継】
NT Liveのような劇場生中継は「コリオレイナス」が初体験だったそうで、
その後、総選挙と同時進行のテレビ生中継"The Vote"があり、18台のカメラを使って上演されたそうです。
"The Vote"のような夜10時きっかりに終わらせないといけない中継は奇妙な体験だったと。
予測しないことが起こったら頭が真っ白になると言って(ΦдΦ)←こんな顔をしてたw
無事に10時に終了した時は選挙の結果の事などすっかり忘れてたらしい。

【シェークスピア作品に出演すること】
舞台役者にとって、シェイクスピア劇に初めて挑戦することは勇気がいることですが、
ジョシー・ロークに食事に誘われ、「コリオレイナス」の戯曲を読んだか訊かれたマークは、
「どうやったらこの話題から逃げられるかな…」と考えていたそう。
というのも今まで2回「コリオレイナス」は見た事があったけれど楽しめなかったため、興味はないと断るつもりであったと。
しかし、彼女と分かれて、戯曲を読んだら気が変わったそう。
プロとしての演技でシェークスピア劇に初めて出演するのは相当な重圧がある、
それはオリジナルのままを保とうとするからであって、
コリオレイナスは、ジョシー・ロークがしたように、速いテンポで描くスリラーとして編集した方がうまくいくと語っていました。

【上映中の迷惑音】
舞台上演中にある観客の上演を妨げかねない態度(咳や携帯電話)に対する意見として一言、
'Kill them!'(笑)
彼は今まで携帯電話の着信音で芝居を妨げられた経験はないそうですが、
「"Three Days in the Country"の初日は夏でよかったけれど、今は寒くなってきて、
 こうやって喋ってる間にも…"ンッンー!!"…こういう音が…"ゲホゲホ!"
 …響いたりするよね…"エヘンエヘン!"」と最近の劇場の様子を実際にやってみせてくれました(笑)。

【お蔵入りのロシアンダンス】
この時上演中の"Three Days in the Country"で、マークはロシアの田舎医師を演じていましたが、
リハーサルでロシアのダンスを踊ることになり、試すことになったけれどあまりにヒドかったそう(笑)。
子供時代に体育教師が宿敵でダンスは苦手な彼にとって「体を動かすなんてホラー」。
結局、本番で披露することはなかったそう。
(その代わり、ロシア語で歌を披露しています。とても素敵でした。)

【実在の人物を演じる】
歴史上の有名人を演じることが割と多く「僕は貧弱なマイケル・シーンだから」とよく語っているマークですが、
遥か昔の王を演じる方がピーター・マンデルセンのような誰もが知っている人物を演じるより気が楽だとか。
マンデルセンについては、何度も映像を見返して、まずは声から似せるように努力をしたけれど、
もちろん、真似るだけではなくて、物語のためにキャラクターを特徴付けることも重要だと語っていました。
自身がドクター・フーでチャーチル首相を書いたときは、実際の彼というよりは、彼の象徴的な部分を生かして執筆したとも。
また、マーク自身は王様をまた演じたいと思っているようで、シェークスピアなら「リチャード二世」に挑戦したいそうです。

【お気に入りのプロデュース作品】
そんな実在の人物を演じていて、一番気に入っている自身の作品は"The Worst Journey in the World"。
絶望的で希望のない苦しみに直面した男達の物語で、非常に英国的な話、誇りに思っていると言っていました。
マークはドラマが作りたかったのですが、BBC FOURはドキュメンタリーの製作を希望していたため、
ドラマ用ではなくドキュメンタリー用の予算しかもらえなかったそうな。

【シャーロック】
コアなファンの集まりだったのか、意外にも「シャーロック」の話題は少なかったです。
S2でどの作品を元に書くか悩んだ時、スティーヴン・モファットから
「『バスカヴィルの犬』が書きたいっていつも言ってたじゃない」と言われた話や、
マンデルソンのオーディションを受ける時、
「君がマイクロフトをやれば観客がモリアーティと勘違いするから演じたら?」と言われた既出の話は出てきました。
チームで作品を作ると、そういう自分では思いもよらない案が出てくるから面白いという話だったはず。
マイクロフトになれたことでホームズ作品の一部になるという目標が達成されたと語ってました。

【映画版"Dad's Army"】
初映画化され、マークも出演している国民的テレビ番組"Dad's Army"。
リメイクと聞いた時、愛されてる作品だけに賛成出来なかったけれど、
脚本を読んで考えが変わって、出演を決めたそう(確か脚本家は友人と言っていた)。
実現はしなかったそうですが、役作りのために足を引きずる仕草を思いついて、
実際に立ち上がって見せてくれました。

【ドクター・フーの新作 "Sleep No More"】
11月14日放送予定のドクター・フー"Sleep No More"は、彼にとって初めて未来を舞台にしたエピソード。
時代物のエピソードを得意としているマークは未来のエピソードも常々書きたかったそう。
このエピソードは4代目ドクター、トム・ベイカー時代の作品、
"The Talons of Weng-Chiang"(脚本はロバート・ホームズ)を参考にしており、
元になった物語には中国人ギャングが登場しますが、"Sleep No More"は中国を日本に置き換えているとのこと!
どんな話になっているのか、楽しみです!

【ゲーム・オブ・スローンズ】
HBOのファンタジー・ドラマ「ゲーム・オブ・スローンズ」にIron Bankの頭取役として参加するのは、
大きな機械の小さな歯車の一つのようなもので、
番組自体の行く末を心配をする必要がないことが楽だったようす。
ベルファストの巨大な製作現場にいるのは楽しかったけれど、メイクとヘアメイクの間にセットの中で迷ってしまったとか。
「あ、ジョン・スノウだ!」とかメインキャストを見物しながらだったそうですが(笑)。
よく記者にストーリーの行く末を訊かれることも多く、何も知らないので話しようがないけれど、
「誰が鉄の玉座に座るべきだと思いますか?」と訊かれたら「僕」と答える準備はしているそう(笑)。

【いつか演じてみたい役】
演じたい役は、以前から発言している「クリスマス・キャロル」のジェイコブ・マーリー。
子供の頃から鏡の前で演じる練習をしてきたとのこと。
何度も話しているのでファンにはお馴染みですが、未だに誰からも話は来ないとか。
誰か声を掛けてあげてください!

【最近見た舞台・映画】
マーク・ライランス出演の舞台と(何だったか聞き取れなかった…"Farinelli and the King"ではなかった)
イメルダ・スタウントンやララ・パルバーが出演している"Gypsy"を挙げました。
彼は米国版を2度見ていたらしく(「僕はゲイだからね」)、米国版のままでは英国で上演するのは難しかっただろうと。
映画「クリムゾン・ピーク」は見たのか訊かれたマークは
「もう見たよ。フフフ…トム(・ヒドルストン)がスペシャルな試写を用意してくれたんでね…」
と自慢げにニヤニヤしてました(笑)。
マーク曰く「1940年代風メロドラマ」らしいです。
あとは、70年代のアメリカ映画、例えば「フレンチ・コネクション」や「スティング」等を見直しているそう。

【まさしく「フランケンシュタイン」】
英国では11月に公開の映画"Victor Frankenstein"について話せることは
「モンスターについての映画だよ」と冗談めかしていましたが、
「ポップカルチャー版フランケンシュタイン」と説明していました。
マークの出演場面の撮影は3日間、ロングクロス・スタジオで行われたとか。
大きなレバーを使ってリフトを引き上げるという撮影を雨が激しく打ち付ける中で演じたマークは、
「これじゃ(撮影じゃなくて)フランケンシュタインそのものだ!」と悲鳴を上げたとか(笑)。

【感銘を受けた「おくりびと」】
今回特に驚いたのが、マークが耳の不自由なお父さんと「おくりびと」を見たという話です。
見るだけで物語が追えるため、字幕で映画を見ていたお父さんが発掘したそう。
マークの口から「おくりびと」のあらすじを聞くなんて!
最後のシーンまでしっかりと語ってくれました。
「とても美しい物語だよ。ネタバレしちゃったけど(笑)」

【実は苦難の道だった、テレビ版リーグ・オブ・ジェントルマン】
マークはTLoGのテレビでの再結成はBBCには求められていないと感じているようです。
実際、テレビ・シリーズが始まるまでも7回も企画を却下されていたそう。
そして、なんと最終的に番組のスタートを許可したのは、
現ニューヨーク・タイムズ社の社長兼CEOのマーク・トンプソンだったとか!
これらの事実はマーク自身もつい最近知ったそうです。

【子供の頃の将来の夢】
演技と執筆しか出来ないから役者と作家をやっていると普段から語っているマークですが、
その他になりたかったのは、古生物学者だそうです。
学者になれるほど学校の成績がいいわけではなかったけれど、
今でも化石収集を楽しんでいるとのこと。

【俳優に必要なもの】
執筆は忍耐が必要だか、俳優は努力と実力にあわせて多くの運が必要。
才能があるのに全く認識されていない役者を沢山知っている、業界はますます入り込みにくくなっていると意見を述べていました。
(客席にいた役者志望の子によると、オーディションに参加するために費用を払わさせたというエピソードを語っていました。
 結局それはゆすりだったらしく、マークも「それ本当?」と驚きながら耳を傾けていました)

【好きな作家】
ディケンズ、ナイジェル・ニール(「…S.F.月世界探険」)、ブライアン・クレメンス(「おしゃれ(秘)探偵」)、
ビリー・ワイルダー、プレストン・スタージェス(「パームビーチ・ストーリー」)、デヴィッド・リーン(「オリバー・ツイスト」)…
また、アガサ・クリスティーについては、ビリー・ワイルダーが
「(クリスティーの作品は)キャラクターがヒドいがプロットは最高だ!」
と語ったエピソードを引用していました。今までも何度かこの話を引用しています。

【小説Lucifer Boxシリーズ】
スパイもの三部作"Lucifer Box"シリーズの続編を期待するファンからの質問に、
企画はなく、テレビ化も2回試みたけれど、実現しなかったことを明かしました。
今はテレビ化の可能性を訊かれても即座に否定しているそうです。

【断った企画】
小説の映像化ではないですが、刑事ものの番組の企画があって誘われたことがあったけれど、
気乗りがしなくて断ったこともあったとか。
心から製作したいと思えて、情熱を注げる企画を手がけるというのが彼にとって重要だと。
でも会合にはいい食事が出て、そこだけは満足だったらしいw

【マークの好きな○○は…】
「好きな作家は?」「好きなホラー作品は?」と質問が続くものだから「次は好きな色を聞かれるのかと思った」と冗談を言ったマーク。
終盤ついに「好きな色は?」の質問も出て一同爆笑。
回答は「オレンジ!」でした!(私も好き!)

【誕生日おめでとう!】
次の日が誕生日だったマーク。おめでとうと言われ、お礼をいいつつ、
ツイッターで50歳になるとファンに勘違いされたことに触れ、
「49だからね!」と改めてしっかり訂正していました(笑)。




予定時間時間は90分でしたが、予定をオーバーして、
マークは出来るだけギリギリまで質問に答えてくれました。

始めのうちは直視出来なかったその姿も、
時間が経つと少し慣れて、最後は表情をまじまじと見られるようになってました(笑)。
マークは質問に答える間、場を和ませるような笑顔を絶やさないので、
ずっと見ていると、こちらまでその笑顔が移ってしまうほどです。

普段、ちょっとしたことでイライラしてしまう私が、
終わった後に立ち寄ったカフェで、注文したハーブティーがなかなか出て来なくても、
笑顔で「気にしないで☆」と返せる優しさが復活するほど(笑)。
マークの笑顔はきっと世界を平和にします(笑)!



さて、トークの後は、ベネディクト・カンバーバッチ主演の「ハムレット」を観劇予定!
一日でマークとベネディクトを見られるなんて、なんて贅沢なんだろう!
笑顔とお茶で温まったら、バービカンへ向かいます。

続く…。


【おまけ】


トラファルガー広場のチャールズ一世像の後ろに、指と指が向かい合っている謎のオブジェが。



アドミラルティ・アーチ、こんなに旗が多かったっけ…



ザ・マルには中国の国旗が並んでます。
(後から習近平国家主席が訪英したことを知ったのでした。)



この日のランチ、マカロニグラタン(のようなもの)とチャイ。



ディオゲネス・クラブ(外観)を毎度のように撮影。
レンタル自転車のスポンサーがBarclaysからいつのまにかSantanderになってたんですね。青から赤へ…。

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