本日からは、「アメリカの巨大資本」と「スーパーメジャー」の影響力を受け、霞ヶ関の省庁がどんな動きをしていたのかを整理してみたいと思います。
手始めに一番の被害者である青山繁晴氏が、【僕らの国会】の中で「メタンハイドレート」開発の妨害省庁についてどのように述べていたのかを2例紹介します。
〈 1例目 〉
・日本は石油、天然ガス等、国の根幹となるエネルギーを全て外国に依存している。しかし日本近海の海底には、石油・天然ガスに代わる「メタンハイドレート」が大量に存在している。
・これを使えば、日本はエネルギー資源を外国に頼らなくて済むようになり、逆に輸出国となれる可能性がある。
・「メタンハイドレート」の採掘開発に投資をせず、国内資源の有効活用に抵抗しているのは、経済産業省である。
〈 2例目 〉
令和2年7月に経済産業省が、「国の中長期的な政策指針 ( エネルギー基本計画 ) 」を、自由民主党の作業部会で説明した時の氏の発言です。
・この説明を聞いた時僕は、「経産省は、日本のエネルギーについて本気で考えているのか。」と、声を大きくしました。
・それでも、私が民間人だった頃に比べますと、役人の皆さんは意見を聞いてくれるようになりました。
・独立総合研究所の社長だった頃は、経産省は会ってもくれませんでした。議員になりますと、話だけは聞いてもらえるようになりました。
経済産業省の「国の中長期的な政策指針」は、書き出しの説明文が次の様に書かれていました。
「今回の改訂は、昨年10月に菅義偉首相が打ち出した、50年の温室効果ガス排出量・実質ゼロの目標を初めて盛り込む。」
〈「国の中長期的な政策指針 ( エネルギー基本計画 ) 」〉
「2019年の状況」 「現行2030年の目標」 「改定2030年の目標」
1. 再生可能エネルギー 18.1% 22~24% 36~38%
2. 原子力 6.2% 20~22% 20~22%
3. 火力 75.7% 56% 51%
4. 水素とアンモニア 0 0 1%
「再生可能エネルギー」と「火力」については、内訳が書かれています。
「再生可能エネルギー」・・太陽光15% 水力10% 風力6% バイオマス5% 地熱1%程度
「 火 力 」 ・・LNG20% 石炭19% 石油 2%
計画の中に「メタンハイドレート」がなく、代わりに似て非なる「水素とアンモニア」の文字です。青山氏が大きな声を出したのは、無理もありません。
シリーズの3回目で紹介しましたが、安倍氏が首相だった時の同省は積極的でなかったとしても、次の様に協力していました。
〈 平成25年 ( 2013 ) 安倍内閣 〉
・渥美半島~志摩半島沖(第二渥美海丘)で、世界初の海洋産出試験を実施。
・約12万立方メートル(速報値)のガスを生産し、メタンハイドレート開発の機運が高まった。
・通商産業省により、新たな「海洋基本計画」と「海洋エネルギー・鉱物資源開発計画」の改定がされた。
・商業化プロジェクトに向けた目標が、初めて設定され、海洋産出試験を含む工程表が示された。
〈 平成26年 ( 2014 ) 安倍内閣 〉
・「日本メタンハイドレート調査株式会社」が、次の目的で設立された。
1. 国が実施するメタンハイドレート開発の、海洋産出試験等に参画する。
2. 挙国的組織体制で、効率的、効果的、円滑に業務を遂行する。
3. 国内民間企業間と知見の共有を図るため、石油・天然ガス開発企業、エンジニアリング企業11社の賛同と参加により設立する。
安倍氏が体調不良で退陣し菅義偉内閣に変わった途端、豹変したように計画から「メタンハイドレート」の文字が消えるのですから、氏の怒りは当然です。
参議院議員になる前の氏は「独立総合研究所」の代表取締役社長で、「メタンハイドレート」の実用化に尽力していました。現在は社長を辞め、参議院議員の傍ら、東大教養学部で自主ゼミの講師もしています。
参議院議員当選後「独立総合研究所」の社長は妻の千春氏となり、跡をついた千春氏は東京海洋大学の特任准教授です。水産学研究者、水産学博士でもあり、海洋調査船に乗り組み「メタンハイドレート」の調査・研究に力を尽くしています。
「資源小国」の日本が「資源大国」になれる話なのに、なぜ経済産業省は抵抗するのかと、この時は思いましたが検討作業をした今は推測できます。
日本のエネルギー問題を管轄する主務官庁は経済産業省ですが、関係する他の省庁は次のように多数ありました。
経済産業省 国土交通省 外務省 環境省 総務省
厚生労働省 農林水産省 文部科学省 財務省