ちょっと古くなるが、気にかかってならないため、ブログに残しておくこととする。
去る9月30日に、BSフジの「プライムニュース」を見た。BSをほとんど見ないので、こうした番組があることを知らなかったから、衝撃的だった。
男女二人のアナウンサーが司会し、指名されたゲストが意見を述べる、というもので、主題はこれからの「日中経済」だった。
チャンネル桜に登場する、学者やジャーナリストは、法の支配が恣意的な中国では、日本企業が狙い撃ちされ、在留邦人の安全も危惧されると言う。中国に進出した日本企業へ警鐘を鳴らし、資本の引き揚げや撤退を勧めている。
政権と官吏機構の上層部が腐敗し、貧富の格差が年々広がっている。公害は垂れ流し、河川も大気も汚れるに任せ、弾圧と強権が国民を押さえつけている。各地で政府に抵抗する血なまぐさいデモが頻発し、この国は内部から崩壊しつつある。トップの政治家や官僚たちすら、資産を海外へ移し、家族を移住させ、いつでも逃げ出せる準備をしている。
軍事費と公安関係予算が、年ごとに膨張し、排他的愛国心と、排他的民族意識を国内で浸透させ、近隣諸国との緊張を高めていると、こういう意見だ。
尖閣諸島への領海侵犯、韓国と歩調を合わせた日本への理不尽な非難と攻撃。「軍国主義を反省せよ。」、「歴史認識を改めよ。」、「過去を直視せよ。」と、自分のことは棚に上げ、よく言えるものと、私はチャンネル桜の保守論人に共鳴し、中国への怒りが抑えられない。
ところが「プライムニュース」の出席者四人は、もっと中国との経済関係を深めるべし、という意見なのだ。
念のため出席者の名前と肩書きを、列挙しておこう。
1. 林 芳正 元農相 日中友好議員連盟所属
2. 岡本 巌 日中経済協会理事長
3. 津上俊哉 現代中国研究家
4. 朱 建栄 東洋学園大教授
朱建栄氏は、先頃まで中国政府に拘束され、スパイ容疑で取り調べられていた人物だ。元農相の林氏を除けば、私にとって後の三人は、怪しげな人物ばかりだった。
先日経団連の会長が中国を訪問し、政府の序列では大きく格下の、汪洋副首相と会談した。政治が冷えきっていても、経済では熱い関係を作りたいと、経団連が挨拶とお願いに行ったのだ。岡本氏は、その場に同席していた人物なので、朱建栄氏のような、いかがわしさはない気がした。
けれども経済関係を深めたいと言う思いが先に立つ岡本氏は、中国を誉め、持ち上げ、卑屈なまでに頭を下げる。日本国民を、あれほど貶めている中国の政府関係者に、「ご理解を頂いた。」とか、「そうおっしゃっていました。」とか、なぜそこまで畏まらなくてならないのかと、不愉快でならなかった。
津上氏も朱建栄氏も、日本がもっと努力すれば、必ず中国は話に乗ってくると、明るい希望でも述べる口調だった。「中国が、水源地や自衛隊の周辺地域を買うと言うのなら、購入を届けさせるように、法改正したらいい。」などと、林氏までが鷹揚な意見なので、情けなくなった。
もし日本企業が中国で同じことをしたら、中国政府は認めないだろうに、林氏の国防意識の欠如に失望した。
ことさら隣国と敵対し、対立を深めることは望んでいないが、国際社会での国益追求には、厳しい姿勢を持つべきでないのか。相手が無理難題を仕掛けている時に、一方的に譲歩し、へりくだると言うのは、常識から言ってもおかしい。同じ町内の住民同士のつきあいと違うのから、「目には目を」という、譲らない強さも必要でないのだろうか。
現在、古森義久氏の「アメリカでさえ恐れる中国の脅威」という本を読みつつあるが、なるほどとうなづかされる事実がある。保守の論人はほとんど語らないが、要するにアメリカを恐れさせているのは、中国の「国家ファンド」であるとのこと。近年多くの国々を破綻させ、世界経済を狂わせてきたのが、「国境なき資本」つまり「国際ファンド」だった。
どこの政府にも拘束されず、資本の論理、つまり利益追求だけを追い求め、「ハゲタカ」とまで蔑まれ恐れられた「資本集団」だ。従来は、アメリカ、イギリスあるいは産油国等が、自由気ままに振る舞って来たが、なんと今では、中国こそが「世界一規模のファンド」を有している、ということらしい。
従来は、資本の論理を追求する民間ファンドだったが、中国が世界の常識を一変させた。中国のファンドは、「私益を追求」しない「国益追求」の資本なのだ。だから他のファンドと区別する意味で、中国のそれは「国家ファンド」と呼ばれる。
例として上げられているのが、南米コスタリカだ。中国の「国家ファンド」は、コスタリカの国債を大量に購入し、台湾との国交を断絶させ、中国へ切り替えさせたという。今や無敵の「中国ファンド」は、巨大な力で世界の主要国の会社の株を買い、国防産業に出資している。明日にも崩壊すると言う意見があるの一方で、中国が、「国家ファンド」という巨大な武器を手にしている、という事実がある。
そんなところを踏まえての四人の話かと、予測しては見るものの、右も左も肝心な所は国民に言わず、表面だけの話を聞かせるのかとうんざりする。右でも左でも、私が疑問をもつのは、彼らが、事実の片面からしか議論を展開しないという、やり方だ。別の事実があるのなら、そレにも言及もしながら、自説を展開すれば良いのだ。自分に都合の悪いことは報道せず、勝手な事実にねつ造を交えて記事にした、朝日新聞と似ているという気がしてならない。
新聞の報道もテレビのニュースも、ネットの情報も、本も雑誌も、そのまま信じていたら騙される。・・年70にして得た知恵だ。私はこれらの全てを否定せず、文句を言いながら、接していく。騙されないための基準は、二つだ。
1. 自分の家族や孫たちのために、良いと思える意見なのか。
2. 自分の国の未来のため、良いと思える意見なのか。
「最も良い意見」と書かない所が、ミソだ。世間にベストの意見などないし、あるとすれば「ベター」の意見だと信じているからだ。中々物わかりの良い、誰にも受け入れられる、素晴らしい達見かと、自惚れたくなってくる。
(先の短さを自覚するから、惚けないうちに書いておきたいと、無意識の意識なのか、大した中身も無いのに、最近はブログが長くなった。)