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ねこ庭の独り言

ちいさな猫庭で、風にそよぐ雑草の繰り言

海賊とよばれた男

2015-01-12 18:06:34 | 徒然の記

 百田尚樹氏著「海賊とよばれた男」(平成24年 講談社刊)、上下二冊を読んだ。

 昨年の3月に申し込み、希望者が500人いるから待って下さいと言われ、なんと年末の図書館最後の日に連絡があった。

 「ご希望の本が返却されましたので、受け取りに来て下さい。」ほとんど諦めていたから、すぐに車を飛ばして、図書館へ行った。

 9か月も待たされた本だけあって、面白かった。中学生の頃に読んだ、佐藤紅緑の熱血小説を思い出した。正義感に燃える少年が、たちはだかる悪人どもに怯むことなく、敢然として闘っていく・・・・・。胸のすくような痛快な小説だった。

 きっと芸術的には、優れていないのだろうと思うが、読者が、日本人の誇りと自信を取戻せば良いと、百田氏はそこだけ念じて書いたに違いない。

 この分厚い本を、三日で読んでしまった自分を思うと、氏の目的は、日本中で十分に達せられているはずと、確信する。

 途中から出光佐三の話だと分かったけれど、知らないことを沢山教えてもらった。
「石油の一滴は、血の一滴」という言葉は、戦前の軍人が言い出したとばかり思っていたが、フランスの首相クレマンソーが、米国大統領ウイルソンに宛てた電報に使ったものだった。

 1917年の第一次世界大戦時に、石油大国のアメリカに、クレマンソーが救援を依頼した時のものだ。まだ中東の大油田が発見されておらず、アメリカが国際社会に台頭しつつある時だった。

 それなのに石油は、既に欧米諸国で、戦略物資として広く認識されていた。だからこそアメリカは、石油輸出を全面禁止し、日本を対米戦争へと突っ走しらせた。当時の欧米諸国は、確信を持って、日本を追いつめ滅亡の渕へ追いやったのだと、しっかり理解ができた。

 出光佐三氏が、「日本は石油に翻弄され、石油に負けた。」と語ったのは、核心を突く名言だった。

 石炭から石油へと、日本のエネルギー構造が大転換し、大量の炭坑離職者が社会問題になったのは、私が高校生の頃だった。アメリカ・イギリス・オランダの石油メジャーが、世界を牛耳っていると、本で読んでも、何のことか分からず過ごしていたが、百田氏の本が目を開かせてくれた。

 彼らこそが、第二次大戦後の、世界の政治と経済の首根っこを握り、己の利益のため、わが世の春を謳歌していたのだ。

 その後0PECが力をつけ、有無を言わせぬ石油戦略を押し進め、世界が震撼させられた、オイルショックがくる。石油の重要性は、今でも変わらないが、省エネとその技術が格段の進歩を遂げ、石油に変わるエネルギーとして様々なものが生まれつつある。

 その全てが、膨大な資金を要する、巨大プロジェクトの産物である。こうなると次に力を持つのは、石油メジャーでなく、国際金融資本ということになる。だから現在は、ウォール街と、ロンドンの金融資本が世界を掻き回している。

 小説と言うより、日本史の参考文献として読んでいるような印象だった。
百田氏が賞賛して止まない出光佐三氏は、戦前戦後を通じて、わが国の産業界のみならず、国そのものを守り抜いた、唯一の傑物という話になる。小説に感動させられているのに、私は根性が曲がっているせいか、氏がこれほどの超人だったかについては、素直に信じていない。

 私利に走らず、常に国の行く末と国民を考えた人物は、出光氏以外にも、日本には沢山いた。いわば「天下国家」を大切にした、気骨のある人間が無数にいたからこそ、今の日本があるとも言える。

 「海賊とよばれるような男」が、次々と生まれ、人々を魅了するところにこそ、日本の特質があると、これが私の独断の主張だ。

 かって百田氏が、NHKの経営委員の一人に選ばれたとき、あまりに正論を遠慮なく主張するので「安倍総理の足を引っ張るな。」と、ブログで苦言を呈したことがあった。しかし、本を読み終えた今は違う。

 出光氏のような人物を尊敬しているのなら、百田氏も、「海賊とよばれる男」の一人となり、どんどんやるがいい。大事なNHKに巣食う「獅子身中の虫ども」、つまり一握りの「反日・売国の徒」どもを、大いに蹴散らしてもらいたいものだ。

 だからこの本は、いつものように「有価物のゴミ」として出すなど、決してできない。
というより、これは図書館の本だから、そんなことをしたら犯罪になる。一日も早く返却し、待っている読者へ回すこと。これが千葉県民としての義務であり、国民としての使命であると・・。

 百田氏に影響されたのか、新年早々、少し風呂敷を広げてしまった。歌の文句ではないけれど、「それもまた、人生。」か。

コメント (2)
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