田舎住まい

吸血鬼テーマーの怪奇伝記小説を書いています。

老臭

2007-08-08 22:23:07 | Weblog
8月8日 水曜日 晴れ
●「おじいちゃん、ひげはやしてる」女の子の可愛い声がとぶ。あたりに老人の人影はない。どうやら、わたしのことらしい。Kでカミサンと化粧品の棚をみていた。「ごめんな、こういうの不精ひげっていうんだよ」「パパは毎朝きれにそっているよ」

●女児のことばに触発されたわけではない。でも、一か月もひげを剃ってない。忙しくてということは、いいわけにはならいないだろう。じじと電気カミソリでひげをそった。さっぱりして新鮮な気分になった。

●昨夜はめずらしく、「アリソン・デボラ」を見ないで早く寝た。三時間睡眠で起きた。毎日考えてみるとせいぜい四時間くらいしか寝ていない。それでも、やらなければならない仕事の半分もかたづけることができないのだ。この年になって、仕事に追われるとはありがたいことだ。なりふりかまわず生きているという感じだ。たのしくて、たのしくてショウガナイ。

●カミサンが香水とヘアートニックを買ってくれた。おそらく、じぶんでは気づかない、老臭がしているのだろう。


名づける

2007-08-08 09:20:39 | Weblog
8月7日 火曜日 晴れ
●どうも落ち着かない。いままでの掘りごたつの書斎と違う。椅子に座って原稿を書くことになった。昭和一桁生まれの男だ。座高が高くタンソクだ。掘りごたつだと、あぐらをかける。あぐらをかくと落ち着ける。疲れたら足を伸ばして椅子に座っていると同じ姿勢もとれる。こたつの上に渡した板に足を載せてくつろぐこともできる。三様に使い分けができたのに……。

●散歩にでた。花のすくない季節なのでムクゲの生垣がむしょうに目につく。ムクゲ、ムクゲと意識して歩いていると、いままで気づかなかったが、かなりのムクゲが垣根や道端に咲いている。

●明日香に行ったことがある。風景はわが故郷のここの田園地帯とさほどかわらなかった。だが、部屋にもどってから変異が現われた。昼のあいだに見て回った此処の歌枕や因縁故事来歴が脳裏にうかんできた。長い歴史の中で「名づけられた」場所が多い。丘も川も木々の生い茂る林もどこもすでにことばになっている。そうした名づけられている場所の地霊に取りつかれたのだった。気づけばなにか和歌らしきものをノートに書き連ねていた。それも、自動筆記でもしているかのように、狂わしく。

●ムクゲ、とことばで認識したとたんに、ムクゲが目に映るようになった。やはりことばなのだ。風景は名前をつけることで印象ががらりと変わる。わたしが歌人であったらよかったのに。残念だ。

●椅子に座って、小説を書き出した。はやくこの部屋に慣れなければ。少し、いやかなり焦りがある。小説や随筆の中で、わが町の山河に名前をつけても、わたしの作品が広く読まれるようにならなければ、名づけられていないと同じなのだから。