田舎住まい

吸血鬼テーマーの怪奇伝記小説を書いています。

なかがわ水遊園

2007-08-19 09:09:49 | Weblog
8月18日 土曜日 曇り
●那須の緑の中をのんびりと歩いている。那珂川べりを美智子さんと、東京にもどっていった長女の家族のことやこの秋に結婚する息子のことを話しながら歩いた。無理に誘って「なかがわ水遊園」まで連れてきたカミサンだ。洗濯機の振動だけで車よい? に似た気分になってしまったという家族伝説のある彼女だ。来るとき酔い止めの薬を飲んできた。ドライブするのはあまり性に合っていない。                                    

●「薬半分にしたからこのあいだみたいに眠くならないわ」
そういえば、タブレットを半分に割って飲んでいた。
「そうだよ、美智子さんの体型だったらそれで充分だろう」
「あの建物がなければいのにね」
コンクリートの工場だろうか。淡いピンクだったかな、太い円筒が斜めに横たわっている。対岸の緑にはそぐわない色だ。でも、わたしはカミサンのほうが気になった。やはり、酔い止めの、センパアを飲んでいるので意識が半ばもうろうとしているのだ。
「目がちくちくする」
白内障が悪くなっているのかもしれない。
わたしはそっと彼女の手をひいた。
「きつく目をとじたりひらいたりしてみるといい」
「あっ、また蚊がとんでいる」
飛蚊症もでたのだろう。

●恋愛小説は書けなかった。恋愛小説のようには生きることができた。そして最終章にさしかかっている。ともかくいまはカミサンとなっている美智子さんと知りあって、結婚して、三人の子供を育て上げ、波乱万丈の人生を生き抜いてきた。彼女のおおらかでひかえめな性格になんどすくわれたことか。来し方がわたしの脳裏にいっきにながれこんできた。

●携帯がなった。「どうやって出ればいいの」カミサンはパニック。うとうとして歩いていたのだろう。
「アスレチックのところにいるからね」娘からの連絡だ。

●わかい夫婦が家族連れで遊んでいる。釣りをしたりアスレチックをしりしている。一夏の思い出づくりに励んでいる。わたしたちは晩年をむかえている。わかいときの、恋いごころはうしなっていない。
「ミイーマ」
喉がはれぼったいといつてキャンデーをなめているカミサンに遠くから孫娘の声が呼びかけている。目ざとくわたしたちを見つけた孫娘が青い芝生の上を飛ぶようなステップでかけよってくる。そういえば、この子はバレエをならっているのだった。

●「ひさしぶりで、美智子さんと手をつないで散歩した」
「あらぁ」
顔は娘はわたしと妻を見返した。孫たちもキャンデーをなめだしている。わたしはキャンデー売りのおばさんの姿を追ったが、はるか丘の向こうに消えていくところだった。どうしてわたしだけキャンデーを買わなかったのだ。冷たいものに弱くなっている。