田舎住まい

吸血鬼テーマーの怪奇伝記小説を書いています。

オババの死/奥様はバンパイァ 麻屋与志夫

2009-12-18 04:52:21 | Weblog
奥様はバンパイァ100

○「オババ。オババ」

「やだね」
だがオババのしわだらけの顔は猛々しくはならなかった。

反対だった。

やさしいものになっていく。

ところがそのときから体に変化があらわれた。

ぽろっと始めは足の指が蛆になって落ちてきた。

「オババ!!!

どうした??????

どうしたのだ」

武がいちはやく気づいた。

mimaにはわかった。

オババのこころが傾いている。

武たちの言葉に揺れている。

「やだってばよ。

いやだ。

なんていわれてもいやだ。

やだっぺな」

那須野の原を駆け巡っていた足だ。

那須野大地にしっかりと足をふまえて生きてきた人狼の女長だ。

その両足が蛆となってとけた。

さすがに両手でけで天井にはりついているのはムリだ。

どさっとゆかに落ちた。

さらに変化がはやくなった。

わあっと蛆がからだをおおった。

いや体のなかから蛆がわいて出た。

体が内側からとけていく。

○「わっちは、化沼のこのテンプルをまかされていただけ……」

それが最後の言葉となった。

体が蛆の山となる。

mimaが手をあわせている。

犬飼のオババの顔がどろりととけた。

武を見る目が、

の若者を見る目が、

かぎりなくやさしかった。

「あなたの悔しさは、

わたしがうけとったからね。

オババ。

あなたはここを守ろうと、

このテンプルを守ろうと必死だった。

そのために、

わたしたちともあらそった。

ひとをベルゼブブの配下にした」

「そうだ。

わるいのはオババじゃない。

オババをだましたものがいる。

それは……奈良にいる」

「さあ、みんなじぶんの姿を見て。

もとにもどっている」

mimaが回りのひとたちに声をかけた。

妖蛆の呪いは解けていた。

かれらは蛆となっては溶けなかった。

もとのスリムなからだになっていた。

「オババは、

最後のさいごには、

やさしいこころをとりもどして死んでいった。

おれたちの敵はオババをながいことあやつってきたベルゼブブだ。

そいつは奈良の都にいる。

おれたち地方のものをくいものにするのは中央だ。

敵は奈良にいたのだ。

むかしも今も、

中央のものが地方を食い散らかしている」

武の声にはかぎりない別れの悲哀がこめられていた。

「オババ。

ありがとう。

おれたちの結婚を許してくれた。

それはベルゼブブに逆らうことだった。

それでも許してくれたのだ」
 

●カミサンのブログもぜひご愛読ください。奥様はバンパイアのモデルのmima
の薔薇ブログです。

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●私事ですが、「星の砂」に「初恋の白いバラ」を載せました。そちらもぜひお読みください。

      




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