田舎住まい

吸血鬼テーマーの怪奇伝記小説を書いています。

文芸部の怪談  麻屋与志夫

2010-02-17 11:51:22 | Weblog
part8 文芸部の怪談  栃木芙蓉高校文芸部


34

変異があらわれていた。
かすかにふるえている。
部屋の古びてくすんだ板壁。
 
板壁に人の顔がうきでている。
シミュラクラ現象ではないか?
と龍之介は思った。
一種の錯覚だ。
壁にある点をみても。
シミをみても。
人の顔のように。
思えてしまう。

東京にいたとき、
暴走族におそわれて肋骨を折った。
あのときは、
整形外科の医師や看護師が、
みんな吸血鬼にみえた。
戦慄した。
そのとき。
Gが。
「幻覚だ。
頭を冷やせ。
幻覚だ。
これもシミュラクラ現象だろう」
といっておしえてくれたとばだ。

でも、これはちがう。
カッターナイフで彫ったらしい鬼の面。
手の平サイズの鬼の顔が!!
戦慄しながら大きくなっていく。 
頭に二本の角。
吸血鬼ではない。
日本古来の鬼だ。
はったと部屋を睨んでいる。
リアルだ。
なかなかよく彫れている。
「なにみてるの?
リュウこっちへきて。
ミーテングはじめるわよ」
「えっ、どうなってるのだ」
知美にはみえていないのか。

だれにも、なにもみえていないのか。
あせった。
やはり幻覚をみているのか。
鬼が笑った。
うれしそうに笑った。
鬼が笑うと、不気味だ。
ぼくは一つか二つの点をみて。
鬼の顔と錯覚してたのか。
あわてて文子をさがした。
文子の姿がみつからない。
「はやく……すわって」
こんどは繭の声だ。
「龍、どこにすわるの」
由果の声がしている。
文子はどこにいったのだ。

 にほんブログ村 小説ブログ ファンタジー小説
one bite please 一噛みして。おねがい。