part10 吸血鬼との愛2 栃木芙蓉高校文芸部(小説)
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バリアがあるようには思えない。
そんなものは存在していないようなのに。
閉鎖空間であることは確かだ。
なにかおかしい。
自由に動けるのは蔵の中だけだ。
階段を上ることもできない。
扉にふれることも不可能だ。
ばんとはね返されてしまう。
文子が龍之介の肩にほほをのせている。
初めてみせてくれる親しいしくさだ。
お互いにすきだということがこんなにときめくものかと龍之介は思った。
吸血鬼の監察官を恋人にもつなどということは……。
薄暗がりの中で文子の目をのぞきこんだ。
「なにかんがえている」
「このままだって……いいような心地よ。
時間がとまってしまっているみたい」
文子は微笑みを浮かべてすらいる。
ふたりはどちらともなく唇をあわせていた。
「どうなるのかな? やはり携帯はつうじない」
「龍。あれみて」
文子が龍之介のみみにささやく。
なにか白い渦のようなものが現れた。
渦が濃くなっている部分が顔にみえる。
恨めしそうな顔がじっとふたりをみつめている。
「鬼の犠牲になったひとたちよ」
「ぼくもそう思う。だがどうしてこんなものをみせるのだ」
「脅しをかけているのよ。おまえらもこうなりたいか!!」
なにか訴えかけるように、口がぱくぱくうごいているのまで鮮明になってきた。
「わたしたちが恐怖を感じないのが、鬼村にはおもしろくないのね」
エモノをいたぶる動物のようなものだ。
どこからかぼくらをみて楽しんでいる。
怨嗟の声を上げてせまる顔に蛆むしがわいてきた。
ぬめぬめとのたくる蛆むし。
呪いの言葉をを吐きながら蛆むしをくしゃくしゃたべている。
「あいつらさらにリアルに実体化するわよ。
そのときがチャンス。見てて」
文子は龍之介の手をとった。
うえにジャンプする。
ふたりは手をつないだまま高く跳びあがった。
恨みの言葉を、ふたりにあびせていたモノの化が遥したにうごめいている。
ふたりは天井にはりついたまま格子窓まで移動した。
「蝙蝠が自由に出入りしていたのをおぼえている」
one bite please 一噛みして。おねがい。
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バリアがあるようには思えない。
そんなものは存在していないようなのに。
閉鎖空間であることは確かだ。
なにかおかしい。
自由に動けるのは蔵の中だけだ。
階段を上ることもできない。
扉にふれることも不可能だ。
ばんとはね返されてしまう。
文子が龍之介の肩にほほをのせている。
初めてみせてくれる親しいしくさだ。
お互いにすきだということがこんなにときめくものかと龍之介は思った。
吸血鬼の監察官を恋人にもつなどということは……。
薄暗がりの中で文子の目をのぞきこんだ。
「なにかんがえている」
「このままだって……いいような心地よ。
時間がとまってしまっているみたい」
文子は微笑みを浮かべてすらいる。
ふたりはどちらともなく唇をあわせていた。
「どうなるのかな? やはり携帯はつうじない」
「龍。あれみて」
文子が龍之介のみみにささやく。
なにか白い渦のようなものが現れた。
渦が濃くなっている部分が顔にみえる。
恨めしそうな顔がじっとふたりをみつめている。
「鬼の犠牲になったひとたちよ」
「ぼくもそう思う。だがどうしてこんなものをみせるのだ」
「脅しをかけているのよ。おまえらもこうなりたいか!!」
なにか訴えかけるように、口がぱくぱくうごいているのまで鮮明になってきた。
「わたしたちが恐怖を感じないのが、鬼村にはおもしろくないのね」
エモノをいたぶる動物のようなものだ。
どこからかぼくらをみて楽しんでいる。
怨嗟の声を上げてせまる顔に蛆むしがわいてきた。
ぬめぬめとのたくる蛆むし。
呪いの言葉をを吐きながら蛆むしをくしゃくしゃたべている。
「あいつらさらにリアルに実体化するわよ。
そのときがチャンス。見てて」
文子は龍之介の手をとった。
うえにジャンプする。
ふたりは手をつないだまま高く跳びあがった。
恨みの言葉を、ふたりにあびせていたモノの化が遥したにうごめいている。
ふたりは天井にはりついたまま格子窓まで移動した。
「蝙蝠が自由に出入りしていたのをおぼえている」
one bite please 一噛みして。おねがい。