田舎住まい

吸血鬼テーマーの怪奇伝記小説を書いています。

番長襲名/ガントレット2 麻屋与志夫

2010-03-25 15:46:06 | Weblog
part11 番長襲名/ガントレット2 栃木芙蓉高校文芸部(小説)


51

第一関門はタンポ槍。
難なくかわした。
突きはするどかったが、横からだった。
脇腹をねらってきたが龍之介の動きがはやすぎた。
第二関門はヌンチャック。
これは正面から堂々と襲ってきた。
「どけ。先を急いでいる。ぼくは襲名レースに参加していない」
棍が風を切っておそってくる。
微塵も手加減していない。
それも頭部を攻撃してくる。
戦慄が背筋をはいのぼってきた。
ふるえていた。
このぼくがふるえている。
おれは、とGの声音が頭の中でひびいていた。
こんなことでは負けない。
心頭滅却。
心頭滅却。
おれは負けない。
なにかこの雰囲気は妖しい。
もっともらしい、次期番長を選ぶための腕試しにしては過酷過ぎる。
これでは命をかけた実戦だ。
まかりまちがえば、もっていかれる。
怪我では済まされない。
殺気が夜気のなかから伝わってくる。
「おれは、先をいそいでいる。もういちどいう、番長襲名には関係ない」
龍之介は怒りを押さえて冷やかに言い放った。
はじめて龍之介が凄みをきかせた声をだした。
それでも攻撃はやまなかった。
リンボーダンスのように反身になって棍をさけた。
腰の特殊警棒を振り出しながら引きぬいた。
おとこの脚にたたきつけた。
ガギッという音がした。
鉄の杭を叩いたようなてごたえがあった。
龍之介はその成果もみずに走りだした。

行く手の二階建ての家の明かりがふいに消えた。
「文子」
龍之介は胸騒ぎがして声に出した。
呼びかけた。
窓ガラスが室内から割れた。
黒い影が屋根にとびだした。
対峙している。
文子と思われる影が庭にとんだ。

「龍。きてくれたのね」
「敵は鬼村か」
「ちがうみたい」
「なに、いちゃついている。ふたりまとめて始末してやる」
「ルーマニヤか? ……下館だな」
「大沢もいるよ。
こんな鱗肌にされた恨みはらさせてもらう。
このご面相じゃ、夜でもなきゃ出歩けないもんね」
「もともと夜の一族でしょう」


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